第169話 ちょっと寄り道してから行きましょう
「それでは早速向かいましょうか。ジーク殿下はお城にいるはずです」
ニーナが先導して歩き出そうとする。
「ああ、ちょっと待って......せっかくここまで来たんだしニーナのひいおじい様に会ってみたいんだけど」
僕はニーナを呼び止めた。なぜ呼び止めたか......これにはもちろん理由がある。
もしニーナのひいおじい様が日本について知らなかったとしたら、日本食のことをひいおじい様の郷土料理と言っていたニーナの発言が嘘であることを意味する。
「はっ! これは失礼しました......アイネ様はジーク殿下とお会いする心の準備がまだできていらっしゃらないのですね。まだ、お時間も早いですし、先に私の家にご招待しますね」
ニーナは何か1人納得したような笑みを浮かべて答えた。
......この幼女は何を勘違いしているんだろうか? まあ、ひいおじい様に話が聞けるならどうでもいいか。
その後、僕たちはニーナの家の客間に案内された。
「アイネ様、ひいおじい様をお呼びしますので、こちらに座ってお待ちいただけますか?」
「うん、ありがとう」
僕は返事をして何も置いていないテーブルの横にあるソファーに腰掛けた。僕の家のものとまではいかないがなかなかにいい座り心地だ。
「お菓子やお茶を用意しましたのでもどうぞ召し上がってくお待ちください」
ニーナは自分のスカートの裾を持ち上げ一礼してドアを閉めた。
「お茶やお菓子って? どこにそんなのあるの? だってテーブルには何も......え?」
さっきまでは何もなかったテーブルの上には湯気が出ているティーカップとビスケットやチョコレートなどが盛りつけられた皿が並べられていた。
「姫様、先ほどニーナ様が用意したじゃないですか? もしかして見えなかったんですか?」
カタリナは不思議そうな表情で僕に問いかけた。
「カタリナ、姫様は特別な訓練を受けておりません。先ほどのニーナの動きを見ることは不可能でしょう」
特別な訓練って何? まあ大方予想はできるけど......たぶんニーナの授業に関することだろう。質問したらカタリナが機能停止しそうだから聞かないけど!
「アイネ様、連れていました。こちらがひいおじい様です」
ニーナの後に杖をついてぷるぷる揺れながら1人の老人が部屋の中に入っていた。
「はじめまして。僕はアイネです。ちょっとお聞きしたいことがありまして......」
「そんなことより、わしゃ朝ごはん食べたかいのぅ?」
老人はお腹をさすりながら僕の話を遮って尋ねた。
もしかしてこの老人......なんだか嫌な感じがしてきたぞ......
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