第167話 関わらなければよかった
数時間後ジーク領に到着した。街中に入ると学問の国というだけあって学生帽にローブを羽織った生徒が数多く歩いていた。
その中にはメイド服を着て歩いている目立った集団がいるけれど......
「カタリナ先輩!」
そのうちの1人がこちらに向かってそう叫ぶと周りのメイド服の人たちも気づいたようでこちらに近づいてきた。
「お元気でしたか、先輩」
「また会えてうれしいです、先輩」
メイド服の人たちはカタリナのことをとても尊敬しているようで憧れのまなざしを向けている。
先日のエリナの時とはまるで真逆と言ってもいい状況だ......ん?
メイド服の人たちの中にひときわ異彩を放っている人物がいたので僕はつい声をかけてしまった。
「あの......男性の方ですよね? なんでメイド服着ているんですか?」
そう、目の前に立っている人物はメイド服なのに男性らしいたくましい腕や脚が見え、そして何より鼻髭や顎髭をバッチリ蓄えているので確信を持って男だと言えるのだ。
「あなたは......ほぅ、有名なアイネ姫ですね。その美貌! 一目で分かりましたよ。これほど美しい女性は世界に2人といないでしょう!」
いや、そう言うのいいから質問に答えてくれないかな?
「おっと、失礼......なぜ男なのにメイド服を着ているかという質問でしたね。いわゆるギャップ萌えというやつです!!」
メイド服男は名言でも言いましたと言わんばかりに僕にビシッと指を突き付けた。
「ギャップ萌え?」
「そうです! 男なら執事服という既成概念を壊す斬新な発想だと思いませんか!?」
そんなギャップ嬉しくない......せめてクリスさんくらいの容姿を手に入れてからその発想に至ってくれないかな?
「ソ、ソウデスネ......斬新な発想を理解してもらうのも大変だと思いますが頑張ってくださいね!」
とりあえずこれ以上関わりたくないので同意してその場を去ろうとする。
「以後、メイドマンとお呼びください!」
メイド服の男、もといメイドマンはサラリーマンの名刺交換の時のようなさわやかな笑顔で顔を近づけてきた。
こいつ関わる気満々のようだ......
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