第161話 不自然な出来事

「コホン......君はワールドオーナーを見つけなければなりません。今からその理由を説明しましょう」

 忍者は咳払いをしてから話し始めた。

 どうやらこの忍者はもう「ッス」は語尾に付けないようだ。おっと......これは突っ込んじゃいけなかったんだったね。話の続きを聞こう。

「この世界に来てから何か不自然な出来事はありませんでしたか?」

「不自然な出来事......はっ......ま、まさか......異世界転移した時に僕が勇者になる予定だったのがお姫様になったことが何か関係があるの!?」

「いやいや、あれは違います。だって私がこっそりと書類を入れ替えただけですから......いや、そうじゃなくてこの世界に来てからです!!」

 あれ? この忍者さらっと犯行を認めたんだけど。僕がこんな可哀そうな目にあってるのってこの忍者のせいだったの? 相手もおあつらえ向きに忍者だし僕が天誅を下そうかな?

「ちょっと睨まないでくださいよ! この作戦だって君が考えたんじゃないですか!」

「僕が考えた?」

 少し考えてみたが全く記憶にないんだけど......?

「さすがにまだ思い出しませんか......とりあえず時間がないので話を先に進めますよ! そう......不思議な出来事! 思い出せそうにないので私が教えてあげましょう! 実は君が手に入れたイセカイテンイの杖だけど1度だけ本物を手に入れているんですよ!」

「え!? 何だって!? そういえばあの時......」

 僕はふとグラエムのお城にあった杖を見つけた時の出来事を思い出す。そう、確かに杖に『オリジナル』と書かれてた文字が次に見た時に『レプリカ』に変わっていたのだ。

「ワールドオーナーの異世界転移者はこの世界のあらゆるものの存在を書き換える能力を持っています。『オリジナル』だった杖を『レプリカ』の杖として存在を書き換えたのもその力によるものです」

「つまり......この世界から逃げ出すことは......?」

「はい。当然できません」

 忍者は満面の笑みで僕の言葉を否定した。

 こ、ここにきて最強能力者の登場展開ィ!? こっちは戦闘能力ゼロなんだよ? 始まりの村を出発したの勇者よりも弱小なキャラなんだよ!

「いやいや! だったらその......ワールドオーナーだっけ? を見つけても僕にはどうすることもできないじゃん!」

 僕はお見合い地獄から抜け出す希望を失ってやや半泣きで忍者に向かって叫んだ。

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