第156話 初めて褒められたんじゃないかな
「こいつらを牢にぶち込んでやれ! 国王軍が来たら首都の牢へ移送する」
「「はっ!!」」
僕の家に着くとドヴァは兵士たちに盗賊たちを牢に入れるように命令した。
とりあえず僕は傷一つつけることなく戻ってくることができたわけだからアウラも死罪にされることもないだろう。
「お疲れ様でした、姫様。それにアスカも見事仕事をやり遂げてくれましたね」
相変わらずというべきか、突然メイド長が僕の前に現れた。
「メ、メイド長が初めて私のことを褒めて......うぅ」
アスカは口元を押さえて目に涙を浮かべていた。
きっと仕事の褒められるのがいかに嬉しいことなのかを実感できたのだろう。この喜びを胸にこれからも仕事を頑張ってね、アスカ。
「今回は減給なしってことなんですね!!」
......嬉しいのはそっちかい!
「もちろんです。仕事をしっかりこなした者の給料を減額することなどありえません」
「やりました! 姫様! ついに私も1人前のメイドとして認められましたよ!」
メイド長の言葉を聞いてアスカは本当にうれしそうな表情を浮かべる。
喜んでいるところ悪いんだけど、アスカに言いたいけど言いづらいことがあるんだ......さっきやった仕事はほぼメイドの仕事ではないと思う。だって、ただ一緒に歩いてただけじゃん!
「それからアウラに頼まれてイェダンを捕まえておきました」
「メイド長! なんで私のシエスタの邪魔をするんですか!?」
イェダンは首元をつままれれ、暴れる子供のように手足をブンブンと振り回していた。
「休憩時間は10分でしたよね? もう既に終わっているかと思いますが何か反論は?」
「うっ......ありません......」
さすがメイド長......一瞬でイェダンを黙らせたぞ。
「残念だったな......イェダン。私は休憩に入らせてもらうよ。そうだ! 仕事の引き継ぎがあったな......この地図のバツ印のところに盗賊団のアジトがあるから残党はお前に任せた。特徴もこのメモに書いておいた。というわけで、ヨ・ロ・シ・ク!」
ドヴァはイェダンに地図とメモを渡して右手を振りながら去っていった。
「ドヴァのやつめ......私に面倒な仕事回しやがって......」
イェダンは悔しそうにドヴァの後ろ姿を眺めていた。
「ところでメイド長はイェダンをどうやって見つけたの?」
アウラも一瞬で見失うほどの相手......メイド長とはいえそう簡単に見つけられるはずがないだろう。
「メイドたるものお仕えする家のどこに誰がいるくらい分かるものです」
うん......メイド長は僕の常識が通じる相手じゃなかったね。
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