第155話 早く帰ってパパとママを安心させないとね

「姫様、ここはまた私の出番ですかね?」

 兵士Aはまたうずうずして何か話したそうだ。おそらくドヴァが目を合わさない理由について何か知っているんだろう。

「......うん。話してもらえるかな?」

「えぇ? そんなに聞きたいんですか?」

 さっきはペラペラと聞いてもいないことを話したのに今度は何? なんだか人を小馬鹿にしたような顔をしてちょっとイラっとするんだけど?

「姫様、実はドヴァさんは可愛いもの好きで姫様と目を合わせて会話すると......」

 兵士Aが答えなかったので別の兵士が代わりに答え始めた。

「すると?」

「おそらく死ぬと思われます。以前かわいい猫を見たときには3日、姫様の後ろ姿を見たときには1週間鼻血を出したあと出血多量で意識不明になりましたから」

 え? マジで? どうなるかは分からないけど試すわけにはいかないね。本当に死んだら困るし......

「ちょ......なんでいいとこ横取りするのさ! ここはもったいつけて教えてあげるのがいいんでしょうが!」

「いやいや......姫様相手に何考えているんだよ! 私たちの雇用主だぞ!」

 いいぞ! 名もなき兵士。僕の想いを代弁してもっと兵士Aに言ってやってくれ!

「それはそうとそんなドヴァの姿を見てみたいな......」

 おっと......そんなことより家に帰らないと。あんまり帰るのが遅くなると国王様と王妃様が怒ってアウラに何か罰を与えるかもしれないし。

「それじゃあ、ドヴァ! 改めて......一度家に戻ろうか。それでイェダンに盗賊のアジトは任せよう」

「承知しました、姫様。」

 ドヴァは背中を向けたまま返事をした。

「それじゃあ姫の姉御、お帰りになるようなんであっしらこの辺で失礼します。引き続き黒ずくめの怪しいやつを探すんで見つけたら連絡します」

 刺青のリーダーっぽい人がペコペコしながらそう言うと刺青の男たちを連れて街を去っていった。

「姫様、ありがとうございました。引き続き残りの盗賊団のこともお願いします。私どもは街の修繕をしなければなりませんのでここで失礼します」

 先ほど夫婦喧嘩をしていた旦那さんも一礼をすると街の人たちの指揮をとって街の修理を始めた。

「おい、盗賊ども! 起きろ! 自分の足で歩け!」

 ドヴァは自白した盗賊以外の2人を足で蹴った。するとその2人の盗賊もゆっくりと体を起して自らが縛られていて捕まってしまった状況を理解した。しかし、目を覚ました盗賊たちは絶望をした様子はなく笑みを浮かべて話し始める。

「俺たちを捕まえたくらいで調子に乗ってんじゃねぇぞ! お頭が来れば......」

「そのセリフはさっき聞いた。お前らのアジトもお頭の情報もこいつから聞いた」

 ドヴァは自白した盗賊を親指で指差した。

「ふふっ......俺って親切だからものを尋ねられたら答えずにはいられなかったんですよ。自分の性格が憎いぜ......」

 自白した盗賊は照れくさそうに鼻の下を人差し指でこすっていた。すかさず2人の盗賊は声をそろえてこう言った。

「「俺たちはお前という存在が憎いがな!」」

 ......どうやらビビっていたことは仲間には知られたくないようだ。

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