第146話 不審者の証拠を見つけたよ

「おはようございます、姫様」

 カタリナがたまたま通りかかって僕に挨拶をした。

「カタリナさん! 聞いてくださいよ! 姫様ったら可愛いんですよ!」

「ちょっ......! アスカ! 誤解だから勝手に広めるのはやめてもらえないかな! 実は......」

 僕は早速先ほどの出来事をカタリナに説明をした。

 アスカと違って真面目に話を聞いてくれるところがやっぱり本物のメイドって感じがする。

「なるほど......ということはさっきまで不審な人物がトイレにいたというわけですね」

 カタリナはそう言うとトイレの中に入って何かを調べ始めた。

「......という嘘までついて姫様は私たちに構って欲しみたいでして」

 アスカはニヤニヤと笑みを浮かべている。

「メイド長にアスカの代わりのメイドを雇ってもらえるようお願いしようかなぁ? うちの職場すごく人気があるみたいだから代わりの人はすぐ見つあるだろうね」

 アスカの態度にイラっとした僕は冗談で天井を見上げながら呟いてみた。

「姫様ぁああああ!? じょ、冗談じゃないですか!! もちろん信じてますよ! 不審者め! いったいどこに行ったんでしょうか!?」

 アスカは自分の額に手を当ててあたりを見回すようにキョロキョロし始めた。

 何と言う手のひら返しだろうか。よし! 今度からアスカにイラっとしたらこの対処法をすることにしよう。

「アスカ、ここを見てください」

 カタリナはトイレの床を指差した。

「これは何ですか?」

 アスカはそういって覗き込んだ。ついでに僕も気になって覗き込む。

「これはハイビスカスという花の花粉です。先ほどここのトイレは清掃を行ったばかりですし、何よりハイビスカスは亜熱帯地域に咲く花ですのでこのあたりには咲いていません」

 カタリナ......すごい! まさか花粉から何の花の花粉か分かるなんて......やはりうちのメイドは優秀だ。ただ一人を除いてね。

「やっぱりそうでしたか......侵入者の痕跡が見つかって良かったですね、姫様!」

 アスカはさも疑ってなかったかのように僕に同意を求めた。

 ......さっきまで疑っていたくせに!

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