第147話 出てってもらえないかな

「私はメイド長にこのことを報告してきますね......アスカ、不審者がまだそばにいるかもしれませんので姫様のことはお任せしますよ。もしも姫様に万が一のことがあれば来月の給料がさらに下がりますよ?」

「も、も、も、も、もちろん分ってますよ! カタリナさん、姫様のことはドンと任せてください!」

 アスカは生まれたての小鹿のようにプルプル震えながら答えた。

 ......というか今月じゃなくて来月の給料が下がるって聞こえたんだけど。アスカは本当に成長しているのだろうか?

「アスカ、少しはここの仕事できるようになったかな?」

「もちろんですよ姫様......いつまでも私がメイドの仕事ができないと思わないください」

 そっかなら良かった。少しは成長したんだね。今後もアスカの給料がスズメの涙程度のお金しかもらえないと可哀そうだもんね。

「ほら見てください......なんと洗濯物を運ぶのを任せてもらえるようになったんですよ! 洗ったり干したりはまだ任せてもらえないですが......」

 アスカは先ほど持っていた洗濯物かごを僕に見せつけて得意げに語っていた。

 ......もはやそれはお母さんのお手伝いレベルじゃないだろうか?

「あ! そうだ......トイレに行くのを我慢してたんだ」

 僕はトイレのドアを開けて中に入る。そしてトイレのふたを開けて衣服を脱ごうとしたところであることに気づく。

「何でアスカもトイレの中にいるの?」

「何でって私の給料がピンチだからですよ!! しっかりバッチリ見ておきますのでどうぞ!!」

 僕の身の安全より僕に万が一のことがあった時の自分の給料が心配のようだ。まあアスカらしいと言えばそうなんだろうけど......そしてアスカは僕のほうをガン見して何をしっかりバッチリ見るんだろうか?

「はぁ......何かあったら叫ぶから出て行って!」

「え、ちょっ......姫様!?」

 困惑するアスカを無理やりトイレの外に追い出した。そして数十秒後何もなく僕はトイレの外に出た。

「姫様、恥ずかしがらなくてもいいじゃないですか!! 同性なんだし私はメイドなんですから!」

 ブーブーとアスカは文句を言っているがあんなガン見されたら同性でも恥ずかしいと思うのだけど。

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