第141話 いらないお土産

「す、すいません......今すぐ離れますから」

 マーラの持つナイフの先端を眺めながらリーダーっぽい男は冷汗を流しながら後ずさりをする。

「マーラ、落ち着きなさい。香水がありますのでこちらを姫様に使えば問題ありません......姫様、失礼します」

 メイド長は念入りに香水を僕に噴きかけた。

 何の香水か分らないけどなかなかいい匂いのする香水だ。この匂いを嗅ぐだけで何となく気分も穏やかになるぞ。

「あっしそんなに臭いっすか?」

 リーダーっぽい男はポカンと口を開けて自分を指差していた。すると隣にいる刺青の男がリーダーっぽい男の服を軽く引っ張りこう言った。

「大丈夫っすよ。ほんのちょっと加齢臭がするだけっすから」

「なんだ......カレーの匂いか......そういえば今日の昼食ったな」

 リーダーっぽい男は胸をなでおろして安心の表情を浮かべた。

 どうやら会話がかみ合ってないようだけど......わざわざ指摘するほどのことでもないので黙っておいたあげよう。

「では、あっしらこのあたりで失礼します......また何かあったら呼んでください。お前らいつもの仕事に戻れ!」

「「うぃーす!」」

 リーダーっぽい男がペコペコした後に刺青の男たちを解散させた。僕はその男たちが散り散りに去る中、毎度のことながら全く期待していないが杖がレプリカかどうかを確認をする。

 はい......しっかりレプリカって書いてあるね! 予想通りのレプリカでした。

 ......ということで今回も無駄足だったわけだ。

「はぁ、帰ろうか......おっとその前にシャーリーさんとミランダさんに挨拶しなきゃ......」

 僕は力のない声でメイド長とマーラに言った。

 僕たちはミランダさんの家の中に戻った。

「杖、無事受け取れたのですね」

 ミランダさんが僕の持っている杖を確認してニコッと笑った。

「はい。杖も受け取りましたのでそろそろ帰ろうかと思います」

「分りました。では、ボクもアイネ様にお土産をお渡ししましょう」

 ミランダは黒い布袋を僕に手渡した。

「わざわざありがとうござい......」

 僕は布袋の中身を見て言葉に詰まった。

 なぜかって? ......水着が入っていたからだよ! この人いい加減諦めてくれないかな?

「......いらないです」

 僕は受取った布袋をそのままミランダにつき返した。

「なっ! なんでですか!? この水着は至高の水着ですね。話すと長くなるのですが......もごっ」

「それじゃあアイネちゃん、またパジャマパーティでね!」

 シャーリーがミランダの口を押さえてどうやら長くなりそうな話を止めてくれた。

「それじゃあ、シャーリーさん、ミランダさん。また!」

 僕が2人に挨拶をするとメイド長とマーラは一礼して僕たちは帰路に着くのだった。

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