第139話 プライドある変態

 昼食を食べ終わり僕は紅茶の入ったティーカップにゆっくりと口元に近づける。紅茶のから漂ってくる香りを嗅ぎながら日々の疲れを癒すことのできる実に優雅な時間を過ごしていた。

「あの......」

 どこから声が聞こえた。全く僕の優雅なひと時を邪魔しないでもらいたいものだ。

 僕は再びティーカップを口へ運び今度は紅茶を口に含んだ。

 適度な温度で高級感のあるほどよい苦みが喉を潤すのにちょうどよく、まさに至高の一杯という言葉が似合うだろう。

「あの......ボクの話を聞いてもらえませんか?」

 ......また先ほどと同じ声が聞こえる。誰だよ......僕のこの癒しの時間を邪魔するのは?

 僕はティーカップを机の上に置くと声のする方向を振り向いてみた。そこには毛布のようなものでぐるぐる巻きにされた上にロープで縛られているミランダが横たわっていたのだ。僕は再び机のに向き直してビスケットに手を伸ばしてそのまま口の中に放り込んだ。そして、喉を潤すために紅茶を口に含んだ。

「ちょっ......アイネ様! 何事もなかったかのようにお茶を飲まないでください! そろそろ解放してもらえると嬉しいのですが......」

「そうしたいのは山々なのですが、シャーリーさんが『ミランダが反省するまでしばらく簀巻きにしておきましょ。私が帰るまでこのままにしてもらえるかしら』って言ったから勝手に解いてあげるわけにもいかないし......」

 ちなみにそう言ったシャーリーさんはスールさんと所用で外出しているのだ。そして、現在シャーリーさんが外出して約2時間ほど経過したところだ。さすがにそろそろ可哀そうに思えなくもないけど......

「ともかくしばらくはそのまま罰を受けて反省してください!」

「ふっ......残念ですね。美少女に見つめられながら罰を受けるとかボクにとってはご褒美ですよ。ただ、シャーリー様が戻る前にアイネ様に水着を着て貰いたいと思いまして......」

 ミランダは白い歯をむき出してニッと笑った。

 ダメだこの人......ええっと他の方法で何とか説得しないと。

「......とにかく僕みたいな姫様相手に水着を着せようとすれば領主といえど重罪になるんじゃないですか? ......もしかすると死罪にだってなるかもしれないですよ」

「アイネ様......ボクはどんな女の子であろうとも可愛い娘がいればその娘に水着を着せたいのです! たとえその後に死罪になろうともボクの人生に後悔はありません!」

 ミランダはカッと目を見開いて僕に宣言した。

 ミランダさん......ぜんぜん格好良くないですからね。言ってることただの変態さんの発言だからね。

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