第116話 杖を取りに行こう

「えぇ!! 姫様もうすぐ帰るんでぇすか? あの! これお持ち帰りできまぁすか?」

 エリナはリーダーっぽい執事に料理を指差しながら尋ねた。

 エリナはまだ食べ足りないのだろうか? 軽く見積もっても既に僕の7、8倍くらいは食べていると思うんだけど......

「え? はい。では持ち帰りの容器を用意しますので少々お待ちを......」

 リーダーっぽい執事少し呆れたような様子で部屋の外向かった。そして部屋の外で待機している執事に容器を用意するように命令していた。

 さてエリナの件はさておき......あと1時間何をして過ごそうか......そうだ。杖! イセカイテンイの杖のこと聞かなきゃ!

「グラエム王子、イセカイテンイの杖を持ってる?」

「イセカイテンイの杖......? 杖ならたくさんあるがそんな名前の杖はあったかな......」

 グラエムは悩むようなそぶりを見せて考え込んだ。

「殿下、口を挟む無礼をお許しください。おそらく2番倉庫にしまってある杖が確か『イセカイテンイの杖』だったかと思います」

 リーダーっぽい執事が一礼をしながら教えてくれた。

 もしかしたら持ってないかもって少し不安になったけど安心したよ。

「持ってるならイセカイテンイの杖、貰えないかな?」

 僕はいつも通りの上目使いでグラエムにお願いをした。

「なるほどプレゼント......女性の気を引くならいいかもしれない。分った。アイネ姫にプレゼントしよう」

 本人の前でそれを言うのか......まあいっか! 杖をもらえるのなら!

「イセカイテンイの杖を持って来てくれ」

「いやいいよ、案内してくれたら僕が取りに行くから」

 グラエムがリーダーっぽい執事命令をしたが、僕が自分で取りに行くことを提案した。

「分りました。では案内しますのでこちらへどうぞ」

 リーダーっぽい執事に連れられて僕とグラエムは部屋を出ようとする。

「さて、わたくしも行こうかしら」

「どちらに行かれるのですか?」

 席を立とうとしたエリシアをメイド長が止めた。

「ちょっとアイネちゃんと一緒に......」

「約束、お忘れですか?」

「う......分ったわ」

 メイド長の言葉にエリシアはしぶしぶ承諾したのを僕は横目で見ながら部屋を出て行った。

「杖なんて欲しがるとは......アイネ姫は骨董品に興味があるのか?」

「あ、いや......別にそういうわけじゃ。秘宝図鑑に載っててなんかいいなと思って欲しくなっただけ」

 異世界に行きたいから欲しいなどと言ったら馬鹿にされそうだったのでグラエムにはこう答えた。

 どうせまたレプリカだろうし......

「こちらです。部屋に入って右手に置いてあるあの杖がイセカイテンイの杖です」

 リーダーっぽい執事は部屋のドアを開けながら教えてくれた。

「ありがとう......右手、右手......お、これか」

 僕は置いてあった杖を手に取る。念のためレプリカと書いてあることを確認......オリジナルって書いてあるな。

「やっぱりこれもオリジナル......え?」

 オ、オリジナルだって!?

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