第115話 “たまたま”なら仕方ないよね
「まあ、いいでしょう......エリシア様、“たまたま”なら何度もあるはずもありませんよね?」
「もちろんよ。“たまたま”なんだから」
メイド長はそれでも少し不安なのか見張るようにエリシアのそばに待機した。
エリシアさんすげぇ......メイド長を言い負かせて引き下がらせるとは! 是非僕にもその話術を伝授して欲しいものだ。とりあえずエリシアさんに時間稼ぎしてもらったこの時間を生かして......
「エリナ、食べてばかりいないで、僕の口が汚れているみたいだから拭いてくれない?」
僕はグラエムに拭いてもらう前にエリナに拭いてもらうことにした。
「あ、はい......それでは失礼しまぁす」
エリナは持っていたハンカチで丁寧に僕の口を拭いてくれた。
よし......これでとりあえず近づかれる口実は無くなったぞ! もうお腹も満足したし料理を食べなければさっきみたいなことはされないだろう。
皿の後片付けが終わりグラエムが再び近づいてきた。
「アイネ姫......お口の汚れが......」
グラエムは僕の口の汚れが取れていることに気づいて近づけようとしたハンカチをそのままポケットに戻した。
「では、料理はどうだ? まだ沢山あるから遠慮せず食べてくれ」
グラエムは料理を勧めた。だが、これで食べてしまうと先ほどと同じ状況になる可能性が高いから僕の答えは......
「もう沢山食べたのでもう十分だよ。ご馳走様。......おっと、そろそろ外も暗くなってきたし帰らないと」
僕は食事が終わった自然な流れでお見合いを切り上げるように誘導する。
「大丈夫です、姫様。あと1時間くらいでしたら問題ありませんので」
やはりというべきか僕は部屋の外に向かおうとしたところでメイド長に止められてしまった。
どうやらまだ僕は帰れないらしい......
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