第112話 心強い味方

「あの......エリシア様、失礼かと思いますが殿下の妨害はしないでいただけませんか?」

 グラエムがエリシアに近づけないので、代わりにリーダーっぽい執事が説得に来た。

「わたくしは妨害なんてしていないわよ。ただアイネちゃんとお話ししているだけよ」

 エリシアは唇に人差し指をつけて何を言っているのか分らないというような顔をしている。

 この人完全なる確信犯だ......王族であるが故にこの執事も強気には出られず、グラエム王子も女性恐怖症だから近づけないというこの状況......圧倒的にエリシアさんは優位をとったわけだ。

「くっ......もうどうすることもできないのか? ......ここで諦めるしかないのか!?」

 グラエムはまるで魔王との戦闘でHP残りわずかの勇者のようなセリフを言い出した。

 ......戦ってもいないのに。

「アイネちゃんこっちの料理もおいしそうよ」

 そんなグラエムの様子を気にすることもなくエリシアは魚料理をフォークに刺して僕の口元に運んだ。僕はそのままパクリと口に入れた。

「これもおいしい!」

 エリシアさんがロイド王子と結婚させたいという思惑がって邪魔しているのだろうけどある意味感謝だな。僕にとってはそのおかげで美味しいものを食べるだけで男の相手をしなくていいから最高だよ。

「姫様、ここへは食事をしに来たのではありませんよ」

 やはりというべきかメイド長はこの状況を許してはくれないようだ。今日は心穏やかに過ごせるかと思ったのに! だけど慌てる必要はない.....エリシアさんはとりあえずこっちの味方だ。メイド長と言えどあのリーダーっぽい執事と同じでエリシアさんに命令などできないはずだ。

「エリシア様......」

 メイド長はそう言った後にエリシアの耳元で何かを囁いたようだ。

「え? 本当!? まあ......そういうことなら今日は食事を楽しむだけにするわ」

 エリシアは僕から離れて椅子に座って食事を始めた。

 ......あれ? あっさりと裏切られたんだけど? メイド長は何て言ったんだろうか......

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