第110話 豪華な料理を用意していたようだ

 若い執事は部屋の中に入り5分くらいたったところでまた部屋から出てきた。

「ええっと......一応グラエム殿下の許可は出ました。ただ、エリシア様も一緒にいることに驚かれておりました......」

 そりゃ驚きだよね。僕のお母さんが来るならともかくロイド王子のお母さんがお見合いに参加とか意味不明だもんね。

「とりあえず中に入りましょうかしら」

 なぜかエリシアが先陣を切って部屋の中に入った。

 自分がお見合いをするわけでもないのに......

 部屋の中に入ると明らかに高そうな食材を使った数々のおいしそうな料理がテーブルに並べられていた。

 もしかしたらこの料理を用意するのに時間足りなかったので直接この部屋に呼ばれなかったのかもしれない。特に芸術品かと思えるほど出来栄えのニンジンなどの野菜で動物の形に作ったものも飾ってある......なんだか作った人のことを考えると手をつけられない。そもそもただの生野菜だから進んで食べたいとは思わないけど......

「グラエムは女性恐怖症のため、申し訳ないが離れた位置からの会話でお許しいただきたい」

 グラエム殿下のそばに控えている執事の人が僕たちに警告するように言った。

 あの人......前にうちに来た執事だ。さっきのバイトのおじいちゃん執事と比べてかなり威厳があるしこの人が本当のリーダーなのかもしれない。

「今日はアイネ姫とそのお付きのかたたちのために料理を用意した。遠慮せずに食べて欲しい」

 グラエムは手で料理を指して僕たちに食べるように勧める。

 せっかく用意してもらったわけだから食べないと失礼になるよな......

 僕はとりあえず芸術品っぽい料理は避けてローストビーフっぽいお肉を食べることにした。

「おいしい......」

 ふと僕は口から料理の感想が出てしまった。え? もっとちゃんと食レポしろって? 一般人の僕にそれは高望だ!

「うぇえええ。何ですかこれ......ニンジンの味しかしないでぇすよ......」

 エリナの声がきこえたので振り向くと鳥の形のニンジンを食べていた。

 ......エリナはなんでそれを真っ先に食べるのかな?

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