第109話 やっと部屋にたどり着く

「あ、いたいた......ったくバイト! 何やってんだよ......」

 廊下の向こうから1人の20代後半くらいの若い執事が歩いてきた。

「すんません。先輩......道に迷っちゃいまして......」

 初老の執事はペコペコと若い執事に頭を下げていた。

 おじいちゃんが若者に先輩ってなんだか面白い絵面だ......プッ、笑っちゃだめだ......おじいちゃん執事に失礼だし。

 僕は必死に笑いをこらえる。

「申し訳ありません.....うちの若いのが失礼をしたようでして」

 若い執事は初老の執事の頭を掴んで何度も頭を下げさせる。

 聞き間違えかな? おじいちゃん執事を『うちの若いの』とか言い出したよ......もしかして突っ込み待ちなの? 突っ込んであげたほうがいいの?

「さ、ここからは俺が案内しますので」

 初老の執事に代わって若い執事のほうが案内をし始めた。

 残されたおじいちゃん執事はその場に立ち尽くして何か可哀そうだな......

 僕たちは取り残された初老の執事を眺めながら若い執事に着いて行く。今度はちゃんと案内をしてくれたようで5分後に目的の部屋にたどり着いた。

「では、アイネ姫以外の女性のかたは隣の部屋でお待ちいただけますでしょうか」

「同伴します」

 エリシアがニッコリと笑いながら若い執事のお願いを却下する。

「あの......グラエム殿下は女性恐怖症でして......」

「同伴します」

 エリシアは同じ顔のまま若い執事のお願いを再び却下する。その様子を見て若い執事は観念したようにため息をつく。

「はぁ......分りました。グラエム殿下にお伺いしてまいります」

「そう、ありがとう」

 エリシアは笑った顔のままお礼を言う。

 この人は前にあったときも強引な人だったな......

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