第108話 執事に案内してもらう

 そのまま初老の執事さんについて行くこと約20分。結構歩いたと思うけどまだお部屋に着いていない。

 このお城は結構広いし移動するのにも時間かかるのかもしれないな......そんな遠い部屋に案内するならもっと近い空き部屋を用意してもらいたいものだ。

 そんなことを考えながらふと左を見ると。

「あれ......ここはさっき休んでいた部屋じゃない?」

「このお城はにた部屋が多いですからよく似た部屋でしょう」

 初老の執事はこちらのほうを振り向いて答える。

 そんなこともあるか......普通椅子や机は同じようなものを買いそろえるもんだしね。

 それから歩き続けることさらに約20分。また似た部屋を通り過ぎる。

「あの......あとどれくらいで着くの?」

 僕は初老の執事に尋ねてみた。すると初老の執事は立ち止まってゆっくりとこちらを振り向いて答える。

「も、もう少ししたら着きますよ......」

「失礼かと思いますが目的の部屋までの行き方が分らないのでは?」

 メイド長が初老の執事の前に立ってしっかりと顔を見ると初老の執事は顔をそらした。

「えっと......何のことでしょうか?」

 初老の執事は冷汗をダラダラと垂らしている。

 え? 何この反応まさか......執事なのに、執事のリーダーっぽい感じの威厳がありそうなのに......もしかして迷ったのか!?

「迷ってますよね?」

 メイド長はさらに問い詰めるようにもう一度尋ねる。

「ええ! そうですよ! 迷ったんですよ! 私みたいなここで働き始めて間もないバイトに案内をさせるとかこの城の人たちは何考えているんですかって感じですよ!!」

 初老の執事は観念したように不満をぶちまけた。

 ......ってこの執事バイトなのかよ!?

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