第99話 女の人だらけの街

 しばらく馬車を走らせると街が見えてきた。

「少しあの街で休憩にしましょう」

 メイド長がそう言った後街のすぐそばまで進むと馬車が止まった。

「いや~ほんと懐かしいでぇす! 姫様、ここはもうグラエム殿下の領地で、何を隠そう私は昔ここに住んでたことがあるんです。案内しますよ!」

「エリナ、じゃあ頼むよ」

 本当に見渡す限り女の人ばかり。男の体だったらハーレム展開も期待できたかもしれない......でも今は女の体。女だらけの中に女が1人増えたところでおいしい展開にはならないだろう。

「ねぇ! 見て! あの方もしかしてアイネ様じゃないかしら?」

「ホントだわ! アイネ様よ!」

 おや? なんだか街の人たちがひそひそし始めたぞ。僕の名前が聞こえたから僕の話をしているのだろうけど姫様ならそこらにいくらでもいるだろう。

 そんなことを僕が考えていると女の人たちがぞろぞろと僕たちのほうに一斉に集まってきた。

「え? 何? 何? 何ィ!?」

 僕はびっくりして少し声が裏返ってしまった。

「アイネ様! 私を! 私をメイドとして雇ってください!」

「何言ってんのよ! あんたみたいな無能がアイネ様の役にやつわけないでしょ! 私のほうがいいですよ!」

「はぁ? 冗談は顔だけにしなさいよ。顔面汚物のあんたなんか居たらアイネ様の迷惑よ! そう、美しさも備えた私こそふさわしいのよ!」

 どうやら集まってきた女の人たちはメイド志望の人たちみたいだ。斬新な就職活動をするなぁ......ちなみに集まってきた女の人たちはメイド長に阻まれて僕の近くに来れないのだ。

「静まりなさい! このエリナ姉さんが来たからにはあんたらの好きにはさせないでぇすよ!」

 おぉ! エリナ勇ましい! もしかしてこの街の番長的な立場だったのかな?

「はぁ? 何言ってんのよ? あんたみたいな変なしゃべり方するメイドなんてさっさとクビになちゃえ!!」

「そうよ! 私たちのために仕事をクビになってさっさとメイドの仕事を譲りなさい!」

 エリナは周りの女の人たちに罵声を浴びせられていた。

 ......番長的な立場ではなかったようだ。

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