第97話 お出かけしてのお見合い

 気づいたら朝になっていた。

 昨日はなるべく長く起きて体感的なお見合いまでの時間稼ぎを......とか考えていたが結局すぐに寝てしまった。

 おかげで気分爽快......って別に嬉しくない!

「姫様、おはようございます」

 お、メイド長だ。いつの間にか帰ってきたようだ。そうだ......メイド長に昨日何してたか聞いてみよう。もしかしたら妹のことをうっかり話してしまうのに期待してね!

「おはよう、メイド長。昨日は午後から姿が見えなかったけれどどうしたの?」

「外出しておりました」

 うん......確かに外出していたというのは本当だろう。カタリナのあの態度から考えても間違いないはずだ。

「どこに外出していたの?」

「プライベートのことですのでお答えしかねます」

 くっ......さすがにアスカと違って情報は漏らさないか。しかしメイド長の圧力が半端なくてこれ以上は聞けそうにないぞ。というかこっち予定はしっかり管理されててプライベートなんてないのにメイド長にだけプライベートなんてずるいぞ!

「そんなことより朝食ができておりますので急いで済ませていただけますか? 本日は外出しますので」

 お、久し振りに外出できるのか。楽しみだな!

 僕は手早く朝食を済ませるとすぐに着替え......させられて出発の準備をした。

 ......いい加減一人で着替えをさせて欲しいんだけど......ま、そういう世界だから無理なんだろうけど。

「メイド長、準備できたよ」

 僕は中庭に出て馬車が用意されている場所に近づきながら言った。

「はい。お待ちしておりました。馬車にお乗りください」

 中庭で待ってたのはメイド長と......誰だこの色黒のメイドは? モブメイドAとでも呼べばいいかな?

「彼女の名前はエリナと申します」

 メイド長が僕の考えを読み取って質問する前に答える。

「姫様、私はエリナでぇす。姫様が記憶なくしてから絡むのは初ですけどよろしくお願いしまぁす!」

 うわぁ......何か軽そうな人だな......お見合いの場に行くのにこの人で大丈夫なんだろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る