第57話 実にいい話

「ガニアン様、この後は姫様はお見合いがありますので、そろそろお帰りいただけませんか?」

 メイド長は僕のカップに紅茶を注ぎながら邪魔もののようにガニアンを見ていた。

「何を言っているのだ? ちょうどいいではないか。私が直々に見合い相手を見極めてやる」

 ガイアンは腕を組んで自信満々にうなずいていた。どうやら少なくとも今日1日は居座るようだ。

「はぁ......せめて邪魔だけ話されませんようお願いしますね」

 メイド長はそう言い残すと部屋を出て行った。

「アイネ姫! ご安心してください! 変な男がいれば我が国の総力をもって国ごと滅ぼしましょう!」

「いや、だからそういうのはやめて!」

 今日のお見合いはかなり注意をしないとまずそうだ。僕の一言で国が消えかねない。

「姫様、カイン殿下がお見えになりました」

 どうやら今日のお見合い相手をメイドが連れてきてくれたようだ。

「よう、アイ。前回は邪魔が入ったが今日は2人きりで......って何でゴリラ女がいるんだよ?」

 ゴリラ女......状況から考えてガニアンのことを言っているのだろう。あんまりこの人を挑発しないでよ......

 僕は恐る恐るガニアンのほうを見るとニッコリほほ笑んでいた。

 よかった......怒ってはいないよう......

「姫様、まずはこの害虫を駆除しますね」

 ゆっくりと腰に刺さっている鞘から剣を抜き始めた。

「ちょ! 待って!」

 僕は慌てて剣を鞘に戻した。

「どうかしましたか? アイネ姫?」

「どうかしましたか......じゃないよ! 何するつもり!?」

「はい。害虫駆除を......」

 爽やかな笑顔で再び剣を抜こうとしたので僕は再び押さえる。

「害虫駆除も禁止! それより2人とも知りあいなの?」

「ああ、こいつは俺の婚約者候補なんだよ」

 カインはガニアンを指差した。

 そうか......それは実にいい話を聞いたぞ。

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