第54話 強引な母娘

「ところでメイド長、妹ってどんな子なの?」

「さ、姫様。こちらをセレナ様にプレゼントしてください。通常は使いの者から渡すことが多いですが、折角ですので手渡しでお渡ししてはいかがでしょう」

 プレゼント用の包装紙で包まれて綺麗なリボンが付いている小さな箱状のものを渡された。

 というかなんかかなり不自然に話題をそらされたような。

 いやいや......きっと僕の質問が聞こえなかっただけなんだろう。

 まずはセレナちゃんにプレゼントを手渡しであげることにしよう。

「これ、誕生日プレゼント」

 メイド長から受け取ったプレゼントをそのままセレナに手渡した。

「ありがとうございますわ」

 ニコッとほほ笑んでセレナは誕生日プレゼントを受け取った。

「で、さっきの話だけどメイド長。僕の妹の件だけど......」

「姫様、折角ですのでセレナ様に普段ロイド様に聞けないお話をお聞きするのはいかがですか?」

「いや、別に知りたくな......」

「アイネお姉様! では今から6時間ほどじっくり、たっぷりとお兄様のいいところをお教えしますわ!」

 おっとセレナちゃんの妙なスイッチが入ってしまったぞ。

「ちょっと待ってセレナちゃん」

 ロイドの母がセレナを止めるように肩を掴んだ。

 さすが母親。娘の暴走を止めようとしてくれたのだろう。グッジョブです。ロイドのお母さん。

「お母様どうして止めるのですか? わたくしはアイネお姉様にお兄様のいいところを知ってもらって結婚してもらいたいのです!」

「止めるために言ったんじゃないの。お母さんも一緒に教えてあげようと思っただけなの!」

 ロイドの母はやる気満々の顔をして、何か企んでいるかのようにセレナちゃんと一緒に目を光らせていた。

「......って、止めるんじゃないのかよ!?」

 僕は突っ込まずにはいられなかった。

「じゃ、隣の個室で」

 と言ったセレナに右の腕を掴まれる。

「話しましょうか」

 と言ったロイドの母に左の腕を掴まれる。

 こうして僕は隣の部屋でロイドのいいところを6時間ほど洗脳のように聞かされる羽目になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る