第53話 妹が欲しいな

「あなたがアイネちゃんだったのね。楽しんでいただけているかしら?」

 振りかえるとロイドの母がそこに立っていた。今度は迷子にならないようにするためか両脇にメイドが1名ずつ計2名体制で見張られている。

「はい。とても楽しいです」

「もし、よかったら道に迷ってたのを助けてくれたお礼を差し上げたいんだけど受け取ってもらえるかしら?」

「そんな。お礼なんていいですよ」

 僕は手を振ってロイドの母の申し出を断ろうとする。

「お願いだから受け取ってもらえないかしら? うちのロイドを」

「いえ、だからいいですって......え? うちのロイドを?」

 お礼なんていらないという意味と男の結婚相手なんていらないの二重の意味でいらない......

 というか母親が息子をプレゼントするっていいのか? 本人ここにいないのに!?

「わたくしアイネちゃんのこと気に入りましたし、ロイドちゃん結婚したいっていうから結婚してくれたら2人とも幸せでしたのに......」

 右手を頬にあてて残念そうな顔でロイドの母はため息をついた。

 2人とも僕が結婚してくれたらうれしいのは分かった。でも、その理屈の中に僕の幸せについても考慮してもらえないだろうか?

「お母様! アイネお姉様とお話していたのですか?」

 僕が考え事をしているうちにセレナちゃんが母親を見つけて駆け寄ってきた。

「セレナちゃん、アイネお姉様って......?」

 ロイドの母はセレナの発言に驚いていた。

「お母様、アイネお姉様は格好いいお兄様と今は婚約されてませんがいずれ結婚するはずなのですから、気が早いとは思いましたがお姉様と呼ぶことにしました」

「さすがセレナちゃんね! わたくしもママって呼んでもらおうかしら?」

 セレナちゃん、ロイドのお母さん、そんな日は永遠に来ないよ?

「メイド長......いきなりどうしたのですか?」

 僕たちを見つけて一緒に来たメイドのサーシャが駆け寄ってきた。

「少々姫様に危機がありましたので......」

 確かに危ない人だったね。あのガニアンって人。

「どうかしたのですか? アイネお姉様?」

「いや、ちょっと考えごとをね」

 僕が少し考えごとをしていたらセレナが話しかけてきた。

「しかし、可愛いセレナちゃんにアイネお姉様って呼ばれるとセレナちゃんの姉になるのは悪い気はしないな......」

 僕がボソッとつぶやくと僕のつぶやきを聞いたのかサーシャが反応をした。

「姫様は妹様がいますよね? だからもう既に姉ではありますよ」

 おっと......聞き捨てならないセリフをサーシャは口にしたぞ。

「僕に妹がいるの?」

「はい。おりますよ」

 妹か......どんな可愛い娘だろうな! これは会ってみるしかないよね!

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