第52話 嵐が去っていったようだ

「どうかしましたか? アイネ姫?」

「どうかしましたか......じゃないよ! 何ですべての男を絶滅させることになるの?」

「いえ、男がいなければお見合いが成り立たないかと思いまして!」

 ダメだ......この人は僕のパパやママと同じ考えの持ち主な気がする。

「困ってるけど反面楽しくもあってお見合いがなくなって欲しくないって言うか......あは......あははは」

 僕は必死に嘘をついた。

 確かにお見合いはなくなって欲しいと思ってる。でもそれ以上に男を絶滅させるなどというとんでもないことが起きて欲しくはないんだよ。

「そうですか。出過ぎたことをして申し訳ありませんでした。ところで今はどちらにお住まいで?」

「えっと今は......」

 僕がガニアンに答えようとするとメイド長が僕の口を塞いでいた。

「(何しているのメイド長?)」

 メイド長に口を抑えられながらだったのでうまく発音できなかった。

「姫様、ガニアン様にお住まいを教えてはなりません」

「メイド長か......久しいな。また私の邪魔をするのか? なんならあんたを倒してからアイネ姫に聞いてもいいんだけど?」

 え? もしかしてこの人メイド長よりも強いの!? というかバトル編でもスタートするの!?

「ガニアン様、今ここで暴れると姫様が困るかと思いますよ」

 ガニアンは僕のほうを見たのでメイド長に口をふさがれたままコクコクと頷いて答える。

「くっ......アイネ姫の話題を持ち出すとは卑怯な! 分った......今日は帰る。アイネ姫、またお会いしましょう!」

 ガニアンは一礼をして立ち去って行った。と同時に僕の口が解放される。

「何かいろんな意味ですごい人だった......」

 幸い今の僕らのやり取りを見ていたのは令嬢ではシャーリーくらいで他の人たちは会話に夢中だったのが唯一の救いだ。

「アイネちゃん、お見合い辛かったの?」

「え? まあ」

 メイド長が横にいるのもあってシャーリーの質問に「すごく辛いのでもうお見合いしたくないです」とはっきり答えられず曖昧に返事をする。

「じゃあ、私と結婚すれば解決よ!」

「もちろん。よろこ......ハムッ」

 僕のシャーリーへの返事はメイド長にサンドイッチを口の中に入れられて遮られてしまった。

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