第47話 迷子
「すみません。何かお困りですか?」
僕の声に反応して女性は僕のほうを見た。
「はい......わたくしとても困っています」
「そうなんですか。僕たちで力になれることがあれば力になりますよ」
僕はその女性に手を差し伸べた。
「では、わたくしの家はどこにあるのでしょうか?」
いや......知らないよ! でもメイド長なら人の心を読めるから分かるかも?
「メイド長、いつもみたいに心を読んでこの人がどこから来たのか当ててみてよ」
「姫様、私は主人の心は読めますが、誰の心でも読めるわけではありません」
......そう言えばそうだったな。
「とりあえず近くの街までお送りしますよ」
「本当ですか? ありがとうございます」
僕の提案に女性は同意してくれた。馬車の空いている席に座ってもらい再び馬車を走らせる。
しばらく進むと近くの街......誕生日会の会場のロイドが住んでいる街にに着いた。
「結構大きそうな町だね。メイド長が小規模って言ったからもう少し小さい街かと思ったのに」
僕は予想外の街の大きさに感想を述べた。
街へと続く道には門番が立っていて検問をしていた。誕生日会のため各国のお偉いさんもくるので不審者を街の中に入れないようにしているのだろうか。
「そこの馬車止まれ......お、王妃様!! 失礼しました!」
王妃様? 僕は姫様だけど?
などと考えると僕の隣に座っていた女性が口を開いた。
「あらあら......ここはわたくしの国の街だったのですね」
「......え? わたくしの国? お姉さんいったい何者ですか?」
「お姉さんだなんて嬉しいですわ。わたくしもう35歳のおばさんなのに。わたくしはこの国の王妃......つまりロイドちゃんのママです」
ロイドの母はピースサインをして僕に微笑みかけてきた。
見た目はとても35歳に見えない......というかロイドのお母さんだったのか!?
「王妃様ダメじゃないですか。いつも迷子になるから外出しないようにロイド殿下に言われていましたでしょう? とりあえず迎えの者が来るまでここにいてください!」
門番の人がまたですかと言わんばかりの表情でロイドの母に忠告をしていた。
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