第39話 料理対決

「では姫様、調理を行いますので食堂に移動しましょう」

 メイド長の言葉と同時に僕の体はメイド長の肩の上に乗せられた。

「豚! さっさと歩きなさい! 私を待たせるなんていい度胸ね!」

 その声の方向を見るとナナリーは持っていた鞭でびゅんと空を切り、すさまじい音でアランのお尻を叩いた。

「ぶひぃいいい!!」

 アランは快楽の絶頂にいるかのように爽やかな表情を浮かべる。

「姫様、どうかしたのですか? まるで絶望のどん底にいるかのような恐怖に満ちた表情に見えますよ?」

 僕の顔を見てアスカは心配してくれたようだ......って僕はどんな顔しているんだよ!

「いや、別に大丈夫だよ......」

 僕は強がってみたが自分でも不快な表情を浮かべていた自覚はある。

 なぜかって? 僕はさっきまで鞭で打たれて喜ぶ変態の隣に座っていたからだよ!

 食堂に移動するとさっそくアスカとナナリーは料理を始める。

 しかし、僕とメイド長とついでにアランがいる場所からだとアスカたちがどんな食材を使っているのか全く分からない。

「メイド長、お願いがあるんだけど?」

「何でしょうか? 姫様」

「人体に有毒性のあるものは使わないようにアスカを見張っていてくれないかな?」

「姫様は何の心配をしているのですか?」

 メイド長はあきれたように僕を見てくる。

「ほら、フグとかって毒があるわけじゃない? アスカならもしかすると毒フグ刺なんか作ってくるかもしれないじゃないか!?」

「姫様、ご安心ください。今回用意した食材に毒が含まれているものはありません」

「そうか。なら安心だね」

 僕は言葉通り安心してゆっくり料理ができるのを待とうとする。

 しかしすぐに疑念が浮かび上がってきた。

「毒がなければ毒を作るかもしれない......ほら! 科学の実験で有毒ガスとか作れるじゃない? もしかしたらアスカも毒を生み出す調理をするかもしれないよ!」

「姫様、ご安心ください。その点も考慮して食材を用意しております。毒は発生しませんのでご安心ください」

 アスカとナナリーがほぼ同時に僕の前に料理を持ってきた。

「「できました!」」

 もう逃げ道はないということか?

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