第38話 最後に花を持たせてあげよう
医務室から手当てされたアスカが戻ってきた。
「ご心配おかけしました! この通り私はもう大丈夫ですのでこれからまた仕事がんばります!」
「いえ、もう仕事をしていただく必要はありませんよ」
メイド長は冷静にアスカに答える。
「どうしてですが? 元気いっぱいなのに!?」
「どうしてってそれは勿論あなたは予定通り解雇ということで」
メイド長の言葉にポカーンと口を開けたまま固まるアスカ。しかし数秒後に生気を吹き返したようにアスカはメイド長に言った。
「3回勝負ならまだ1回残っているじゃないですか!?」
アスカはルールを理解していないのだろうか? 3回勝負だけど2回勝った方を採用だよ?
仮に次に勝負して勝ったとしても採用されることはないからね?
でも、アスカの最後の仕事だ。せめて最後くらいいい思い出を作って故郷に帰ってもらおう。
「はぁ......あなたは何を言っているのですか? この勝負は......」
メイド長がアスカに説明しようとしているところに僕は割り込んでメイド長にお願いをする。
「メイド長! お願いがあるんだけど。最後にアスカの得意なもので勝負させてあげられないかな?」
「まあ、いいでしょう。アスカが得意なものは何ですか?」
メイド長は僕の言葉を承諾して、アスカにしつもんをする。
アスカは少し考えた様子を見せると閃いたような様子を見せこう答えた。
「私! 料理が得意です!」
「料理勝負はダメです!!」
アスカの言葉に対してナナリーは拒絶するように叫んだ。
「え? どうして?」
僕はおびえた表情をしているナナリーに尋ねてみた。
「ブタのくせに人間の言葉を使うんじゃないよ」
ナナリーのドSモードが出てしまったようだ。
「も、も、も、申し訳ありません! わざとじゃないんです。本当に申し訳ありません!」
ナナリーはその場に土下座して謝った。
「料理対決ですか......うちにはシェフがいるので特にメイドに料理技術は求めていませんが......まあいいでしょう」
メイド長は料理勝負を受け入れたようだ。
ん......待てよ。もしかして「姫様、どちらがおいしいか判定してください」と言われて食べさせられるんじゃないだろうか?
ナナリーの様子を見る限り不安しかないぞ。アスカの料理食べたら死んだりとかしないよね?
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