第34話 新しいメイドを雇用するための条件

 冷たい目をしながらナナリーは先ほど転んだアスカを見下げていた。

「ハッ......」

 なんだか突然人が変わったようにナナリーが慌てだした。

「し、失礼しました。私はアラン殿下のメイドのナナリーです。アイネ姫様とお会いできて光栄です」

 ほっ......なんだ。普通のいい子じゃないか。さっきはびっくりしたよ。

「こちらこそよろしくね」

 僕はアランを無視してナナリーの前に移動して挨拶をした。

「臭い息をかけるのをやめてもらえるかしら?」

 ん? おやおや......普通にいい子なナナリーからおかしな発言が聞こえたぞ。

「嘘......申し訳ありません。私こんなこと言うつもりじゃ......」

 ナナリーが独り言のようにつぶやき始めた。何だろうこの子どこかおかしい。

「はっ......もしかしたらアラン殿下が昔研究していた『メイドをドSにしたい』計画のせいかもしれません!」

 アスカはなんだか不気味な計画の名前を口にした。

 名前を聞いただけでどんな内容かは分るが一応聞いておこう。

「で、それはどんな計画なの?」

「メイドをドSにするためのあらゆる調教をするんですよ!」

 そのまんまじゃないか......

「やっぱり私......アラン殿下の元でこれ以上働きたくありません! アイネ姫様! 私もアスカと一緒に雇ってください! お願いします」

 懇願するようにナナリーに頼まれる。別に僕としては構わないんだけど。

「姫様、私からもお願いします!」

 アスカが友達のために頭を下げる。そんなこと言われちゃ雇うしかないよね。

「それじゃあ雇......」

「ダメですよ姫様......不要な人数のメイドを雇っては」

 メイド長が背後から話しかけてきた。相変わらずメイド長はどこにでもいるよね。

「1人くらいダメかな?」

「では、1人ほどやめて欲しいメイドがいますので、その者と交代で雇うということでしたらいいでしょう」

 僕とアスカは同時に言葉を発した。

「ありがとう。メイド長!」

「ありがとうございます。メイド長!」

 メイド長も優しいところあるじゃん。いつも僕を否定してばかりだけど今回は承諾してくれるんだね。ありがとう。

「ところでやめて欲しいメイドって誰なの?」

 僕はメイド長に尋ねるとメイド長の右手の人差し指はアスカに向けられる。

「え? 私? えぇえええ!!」

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