第2章 この世界とおさらばするために

第33話 友達とは

 自由な日は終わりまた朝がやってきた。

 だけど今日からは目的を持ってお見合いをする。

 結婚する気になったかって? おいおい気持ちの悪いことを言わないでくれよ。

 僕の目的はイセカイテンイの杖を手に入れることさ。

 杖を手に入れてこんないかれた世界からお別れしてやるのさ!

「姫様、お食事中失礼します。今日のお見合いの相手ですがまずはアラン殿下としていただきます」

 僕は朝食を食べているときにメイド長に話しかけられた。

 早速チャンスが来たわけだ......必ず杖を手に入れてやる!

 厚切りのベーコンにナイフを突きたて僕は決意をする。

「姫様、行儀が悪いのでそのようなことはしないでいただけますか?」

 メイド長に怒られてしまった。

「ごめんなさい......」

 僕は朝食を手早くすませてお見合いのする予定の部屋でアスカと一緒に待機していた。

 しばらくするとアランが部屋にやってきた。

 いや違うな。やってきたというよりは連れて来てもらったという感じだ。

 そしてその恰好は当然のように縄で縛られて口には猿ぐつわを口にくわえている。

 この男はお見合いをSMパーティーか何かと勘違いしているのではないだろうか?

「えっ......ナナリー!?」

 突然アスカは大きな声でアランと一緒に来たメイドさんの名前を呼んだ。

「えっと、知り合い?」

「はい! 幼馴染で大親友なんです!」

 アスカにも友達はいたんだ。もしかしたらあまりにもドジっ子すぎて友達がいないんじゃないかと僕は3秒くらい心配したことがあったのだ。

 アスカはナナリーに駆け寄ると抱きつこうとする。

 しかし、ナナリーはそれを振り払ってこう言ったのだ。

「汚らわしい豚が私に触らないでもらえるかしら?」

 あれ? 友達ってこんな反応したっけ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る