第32話 目的を見つけた

「姫様ぁ......ひどいですよ」

「ごめんって言ったじゃないか。ほらこれボーナス代わりにこれあげるから」

 僕はさっきの本がずらりと並んだ部屋から持ってきた世界の秘宝図鑑を指差した。

「いらないですよ! 本じゃお腹は膨れません!」

 アスカの欲しいものの判断基準はお腹が膨れるものかどうかなのかよ。

「......あれ、これ私見たことありますよ」

 アスカは僕がさっき見つけたイセカイテンイの杖のページを眺めながら呟いた。

 え? アスカはこれ知ってるの!?

「アスカ!」

 僕は驚きのあまりアスカの腕を掴んだ。

「調子乗ってすみません。ボーナスは諦めますので許してください!」

「いや、そうじゃなくてこれ!」

 僕はアスカの目の前に本を近づけた。

「はい、確か古代遺跡から見つけたということで、アラン殿下に献上品として渡されてました」

 まじか......あの変態が持っているのか。

 古代遺跡から見つかったってところがなんだかリアリティがあって本物のような気もする。

 なんとかしてその杖を貰えないだろうか?

「その杖、アラン殿下から貰えないかな?」

「そんなの簡単じゃないですか?」

 アスカは即答した。もしかして物置小屋の奥にしまっててゴミ同然の扱いをしていたのだろうか? もしそうなら簡単に貰えそうだ。

「え? 本当?」

「はい。だって姫様はアラン殿下と結婚すれば簡単に貰えると思いますよ」

「吐き気がするよな気持ち悪いことを言うはやめてもらえるかな」

 何で杖をもらうだけで結婚しないといけないんだよ! しかもドMの変態だよ?

 一緒に暮らすことを考えるだけでも気が狂いそうになるわ!

「そんなに嫌ですか?」

 アスカはふざけた質問をしてきたのでこちらも質問で返すことにした?

「それじゃあアスカはアラン殿下のとこに戻ってみる?」

「もちろん冗談ですよ! 私もうあんな仕事嫌なんですよぉ!!」

 アスカは過去の仕事内容を思い出したのか取り乱しながら懇願するように僕の足に抱きついてきた。

 しかし、結婚は絶対にしないけど杖は貰いたい。何とかいい方法はないだろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る