第31話 ボーナス支給
僕はあの後小説系の本とついでに世界の秘宝図鑑を自室に持ち帰り読むことにした。
なんでわざわざ自室に戻ったかって?
あのメイドにじーっと見つめられているとなんだか命を狙われているような気がして怖かったからだ。
その分自室だと見張りはしないみたいなので視線を感じることなくくつろげるわけだ!
「失礼します! お茶を持ってきました! きゃあああ!」
アスカは盛大に持ってきたお茶を床にぶちまけた。ドジっ子メイドとしては満点なのだろうけど、ここだと0点のふるまいと言わざるを得ない。
「も、申し訳ありません!」
アスカは何度も頭を下げて謝っている。もはやアスカが何か失敗しても「ああ、またか」と思うだけで怒る気には全くなれない。
「とりあえず早く片付け方がいいよ。メイド長に見つかったら大変なことになりそうだし」
アスカは急いで片付けているが、時すでに遅しと言うべきかメイド長が部屋の外からアスカの様子を見ていたのだ。
「本日も減給......と。おや、今月分の給料がマイナスになりましたね。では来月分の給与から引くことにしましょうか」
メイド長はメモ帳を取り出してまたもアスカの減給を記録しているようだ。
「メ、メイド長! お慈悲をぉおおお!」
アスカは泣きながらメイド長のもとへ駆け寄っていく。
先日のおう吐事件のこともあるし少しくらいアスカにボーナスを出せないかメイド長に交渉してあげよう。
僕はアスカが必死に片足にしがみついているメイド長のもとまで歩いて行く。
「メイド長、アスカは先日ほら、グラエム殿下のおう吐事件で悲惨な目に遭ったからさボーナス出してあげたいんだけど」
「姫様ぁ」
アスカは涙だけじゃなくて鼻水まで出したその顔で僕の着ている服に抱きついてきた。
汚っ......とは思ったけどいまいってしまうともらえるボーナスがそのままカットされそうなのでこらえることにした。
「姫様がそうおっしゃるのでしたら......分りましたでは今月の減額前の給与分をボーナスとして支給しましょう」
以外と話が分るじゃないかメイド長!
反対されるかと思ったけど意外とすんなり了承してもらえたのだ。
「その代わりに私からのお願いも聞いていただけますか?」
「うん。いいけど?」
メイド長がお願いだと。珍しいこともあるんだな。
「お見合いは嫌な顔せずにちゃんとしてくださいね」
さすがメイド長。こういうタイミングでこのお願いを持ってくるとは。
そんなこと言われても僕の答えは決まっている。
「やっぱりボーナスの話はナシでいいや!」
「姫様!? そんなのあんまりですよぉおおお!!」
あまりにもお見合いが嫌すぎてアスカの叫びむなしくボーナスの話は白紙になってしまった。
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