第30話 もしかして帰れるの?

 とりあえずメイドの私物の本は元あった場所に戻して他に面白そうな本がないかを探した。

 すると1冊の本に目がとまり僕はその本を本棚から抜き取った。

 本のタイトルは「世界の秘宝図鑑」と書かれていたので何となく興味を持って本を開く。

 中をぱらぱらめくって見るが、ほとんど宝石とかアクセサリー類ばかりで特に僕が期待していた内容ではなかった。

「まあ秘宝ってこんなもんか......あ」

 誤って本を床に落としてしまった。僕はそれを拾い上げ開かれたページを見て驚いた。

「イセカイテンイの杖、えっとなになに......異世界に転移できると言われている杖ぇえええ!?」

 僕は驚きのあまり叫んでしまった。

 え? まじ? 僕帰れるの?

 僕は喜びのあまりメイドにその本を見せた。

「ねぇ! これ見て!」

「はい......えっと、この杖がどうかしたんですか?」

「この杖どこにあるの?」

「えっ......あははは!」

 メイドは突然笑い始めた。

 何か僕はおかしなことを言っただろうか?

「申し訳ありません......姫様もなんだか子供みたいなとこあると思って笑ってしまいました」

 メイドは目にたまった涙を手でぬぐっている。

「え? どういうこと?」

「だってその杖は昔の作り話のモデルになっただけで、本当に異世界に転移できるわけないじゃないですか。でも子供っぽくて可愛かったですよ」

 メイドは異世界にできないって言ったけれど本当に異世界に転移できる杖はないのかな?

 だって僕自身が異世界転移しているんだよ?

 それにしてもメイドのその態度にちょっとイラっとするな......僕もイタズラっぽく言い返してやることにした。

「ふーん。どうせ僕は男同士が裸で抱き合うような本には興味のない子供ですよーだ」

「姫様......それだけはご内密に......絶対にご内密にしてくれますよね? もし、姫様がばらしてしまったら私は何するか分りませんよ......」

 どっちの意味だろうか? 自殺的な意味でも嫌だけど僕に何かする的な意味で言っているなら犯行予告だよ?

 どっちにしてもメイドがあまりにも怖い表情で迫ってきたので僕は承諾せずにはいられなかった。

「あ、はい......」

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