第27話 女性恐怖症の王子

「とりあえず今日のところは予備日として空けてありましたので姫様の予定はありません。グラエム殿下をお呼びしなさい」

「はい! 了解でありますメイド長!」

 そう言ってアスカは急いできた道を戻りグラエム殿下を呼びに行った。

 しばらくすると目を疑うようなイケメンがアスカの10メートル後ろくらいから現れた。

 具体的に言うとキリっとした目もと。きれいな顎のラインに高い鼻筋。透き通るような白い肌だった。

 さらに言うと右目の下の泣きぼくろまであり、女性なら誰もが魅了されそうだ。

 その隣に立っているタキシード姿の男性が先に口を開いた。

「グラエムは女性恐怖症のため、申し訳ないが離れた位置からの会話でお許しいただきたい。私はグラエム殿下の執事でございます」

「分りました」

 僕は一言だけ執事に答えた。

 グラエムがうつむいていた顔をこちらに向けて目が合う。

 するとグラエムが僕の方に近づいてきたのだ。

「え? 何、何、何、何!?」

 僕は焦って怯えるように叫んだ。

「自分と結婚してほしい。あなたからはなぜか恐怖を感じない」

 僕の手を握ってグラエムははっきりとそう言った。

「はぁ?」

 え? こいつ今何て言った? 結婚だと?

 女性恐怖症って言ったじゃん......今の僕は女性だよ? グラエムが恐怖の対象にしている女性だよ?

「殿下が......こんなに女性の近くに、いやそれどころか手までお握りになられて......」

 執事の人は感動のあまりか涙を流している。

 泣きたいのはこっちの方だよ......消化試合じゃなかったの? 1回会えばそれで終わりだと思ってたのに。

 神様......あなたはそんなにも僕が憎いのですか?

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