第19話 他の人にお見合い相手を譲りたい

 その後、僕とチョココロネの人は客室に移動した。

「ご、ごめんなさい。もしよかったらチョココロネさんも同席しない?」

「え? いいの? ってチョココロネって誰のことよ? もしかして私のこと?」

 僕はコクリと頷く。

「チョココロネ何て名前なわけないでしょ!! 私の名前はコロネよ! ちゃんと覚えなさいよ!」

 いや、そもそも名乗られていないけど。

 ていうかコロネって名前なんだ。今後も間違えてチョココロネって呼んでしまいそうだ。

「姫様、ザックス殿下がお見えになりました」

「じゃ、コロネさんあとは2人でごゆっくり」

 僕はそう言って部屋から出ようとする。

 何かにぶつかった。うん、予想はしていたけどね。メイド長にぶつかったのだ。

「姫様、どちらに?」

「いやぁ後は若い2人に任せようかと思って」

「姫様も若いですのでこちらでお待ちください」

 メイド長に首をつままれ僕は椅子に座らさせられた。

「もしかして......私のためにザックス王子は譲ってくれるというの?」

 チョココロネ......じゃなかった、コロネさすがです!

「もちろんそのつもりさ」

「そう言って油断した私を罠にはめるつもりなのね!!」

 なんでだよ! 悪役令嬢は相手の言葉を逆手にしか取らないのか!?

「と見せかけて実はザックス殿下を狙ってました」

「そうだったのですか? アイネ姫?」

 かなりタイミングよくザックスが部屋に入ってきた。

 バカヤロー!! なんでこのタイミングで入ってくるんだよ!!

「あんた、謀ったわね!! さりげなく会話の中でアピールするなんて!!」

 しかもコロネに恨まれるというダブルパンチですか......

 いやでも、ザックスがコロネのほうが好きならまだチャンスはある!

 この質問をするんだ。

「ザックス殿下、私とコロネさんどちらが好きですか?」

 ザックス殿下がコロネのほうが好きだった場合コロネと答えざるを得ない。

 さらにどっちも好きだよとか優柔不断野郎みたいな発言をしたら「どっちもだなんて......最低!」と答えることができる。

 完全勝利だ......抜かりない計画だ!

「もちろん。私はアイネ姫だけを愛しております」

 僕の計画は失敗に終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る