第16話 悪漢どもに襲われてしまった

 僕たちは馬車から下りると簡素なコテージが1軒立っているだけだった。

 あそこでお見合いをするってことか。

「メイド長、中で待っててもいいよね?」

「もちろんでございます」

 メイド長はこういうときだけ返事してくれるんだ......

「ちょっと待ちなお嬢さん方」

 ガラの悪そうなナイフを持った男たちが5人くらい現れた。

 はいはい分かりましたよ。

 どうせここでジークがカッコ良く現れて「姫、ご無事ですか?」みたいな展開なんですよね。早く来てください殿下。

 シーン。

 あれ? 誰も来ないよ?

「おうおう......無視してんじゃねえぞ」

「助けてください!! 見逃してください!! 私だけでも見逃してください!!」

 アスカが男たちに命乞いをしている。というか私のために盾になって「お逃げください、姫様」くらい言えないのか?

「ご安心ください、姫様」

 隣から頼もしいメイド長がボキボキと指を鳴らして男たちに近づく。

「なんだぁババア? やんのか?」

「うぉりゃー!!」

 メイド長はそこにいる男の1人の腕を掴んでそのまま投げ飛ばした。

 砲丸投げでもしているかのような飛距離だ。30メートルくらい飛ばされてね?

「何だこいつ......なんて力だ」

「一気にやっちまえ!」

 リーダーっぽい男の掛け声で3人の男か近づいてくるが、メイド長は1人目をアイアンクローで捕まえて股間を蹴りあげる。

「あひぃ!」

 たまらず男は痛みに悶絶する。そして続けて2人目も突き出したナイフをかわしてまたも股間を蹴りあげる。

「うひぃ!」

 またもたまらず悶絶して倒れる。3人目は......

「ひぃー! 化け物だ! 助けてくれぇえええ!!」

 逃げだした。つられてリーダーっぽい人も逃げだした。

「待ってくれ! 俺をおいていくんじゃねぇえええ!!」

 すげぇ......メイド長。あんな怖そうな人たちを簡単に片づけてしまった。

「大丈夫ですか? 姫様?」

 僕もうメイド長と結婚してもいいかも。一応性別は女だし男よりましだ。

 そんなことを考えている間にメイド長は悶絶している男たちをここから30メートルくらい先に投げ捨てた。

 その様子を見ながら僕は「なんかもう疲れたから帰りたいな」と思わずにはいられなかった。

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