第11話 脱出作戦

「アスカ、お願いがあるんだけど?」

「はい、何でも言ってください?」

 夕食を食べた後にこっそりアスカを自室に呼んだのだ。何で呼んだかって?

「城から逃げ出そうと思うんだけど協力してくれないかな?」

「え? どうして姫様......」

 アスカはこの世の終わりのような顔をして冷汗を流している。

「姫様逃げたら私クビになったりしないですか!? そのあたり大丈夫なんですか!?」

 えぇ......そっちの心配......

「今言うこときかなかったら解雇します」

「鬼ですか!? 姫様!?」

 アスカは涙目で僕の服にしがみついてくる。

「多分大丈夫だよ。僕が採用したのに他の人が勝手に解雇できないと思うよ」

「分りました。姫様を信じますよ......ところでどうやって城から抜け出すんですか?」

「よく聞いてくれたね。まずプラン①を説明するね。僕がアスカの服を着てそのまま逃げる!! はい、これ着替えね」

 適当にクローゼットの中から服を渡した。

「はぁ......分りました」

 アスカは服を脱ぎ始める。これはこれでいい眺め......いかんいかん。アスカに悪いな、こんなこと考えちゃ。

「はい。どうぞ」

 アスカから服を受け取り着てみる。うわぁ......僕がチビすぎて服がダボダボだ......

 まあ、これでも意外とうまくいくかもしれないし試してみよう。

「行ってくるね」

「いってらっしゃいませ」

 アスカに見送られ部屋の外に出ると部屋のそばに待機しているメイドに声をかけられる。

「どうかされたのですか? 姫様?

 即ばれしてしまった......


「おかえりなさいませ。早かったですね」

「プ、プラン②の説明をします!! カーテンをロープ代わりにして窓から逃げます!!」

「姫様、ここ地上まで100メートル以上ありますよ? 絶対に足りないと思いますけど......」

 アスカは的確に突っ込みを入れた。

「最後にプラン③を説明をします!! 私がこのキッチンワゴン(食器を運ぶやつ)の中に隠れて部屋を出て、アスカがそのまま城の外に連れて行ってくれる!!」

「はい。分りました」

 私はキッチンワゴンの布の中に隠れてじっとする。

「アスカ!! お願い」

 アスカにキッチンワゴンごと私を部屋の外に連れ出す。

 まず第一関門である部屋の前のメイド。

 特に何も言われることなく通過に成功!!

 そのまま運ばれていくが、メイド長の声が聞こえる。

「お仕事ご苦労さま」

「メイド長もご苦労様です」

 アスカがメイド長に挨拶をする。

「ところでなぜ姫様がキッチンワゴンに隠れているのですか?」

 何でばれた!!

「え? 姫様なんて隠れてませんよ......」

 アスカ!! ナイスフォロー!!

「私の眼はごまかされませんよ!!」

 キッチンワゴンから布をはぎ取った。すると僕が丸見えの状態になる。

「あ......」

「姫様、何か言うことはありますか?」

 メイド長は僕に詰め寄った。

「アスカに無理やりやらさせられました」

 僕はメイド長に目を合わせずにそう答える。

「ひ、姫様!?」

 アスカが涙目で僕にしがみついてきた。

「はぁ......大方姫様に付き合わされただけでしょう。お咎めはしません」

「メイド長ぉ!!」

「その代わりに姫様が不審な動きを見せたら報告すること!!」

「はい!! 分りました!!」

 なんてことだ......敵が増えてしまった。

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