第10話 お見合いをしてるんだよね?

「メイド長。今日はそろそろ部屋で休んでていい?」

「いいとでも思っているんですか?」

 先生口調で僕の我がままをまったく聞き耳持ってくれない。

「次が最後ですから、頑張ってください」

 そう言うと部屋の入口のところでメイド長は待機する。

 僕はクッキーでも食べながら仕方なく待っている。待っているのだが......

「メイド長。何か待ち時間長くない?」

 そう、次のお見合いは16時からと聞いていたのにもう17時になっているのだ。

「少々準備に時間かかっているようです」

 別にいいよ。準備とか......服装とか正直どうでもいいし、何ならジャージ姿で来てくれて構わないよ。

 ついでに僕の服装もジャージ姿だとありがたいんだけど。

「お待たせしました。アラン殿下がお見えです」

 メイドの1人そう言うと、部屋に1人の男が入ってきた。

「ん? えぇええええ!!」

 服装何でもいいと言ったけども目隠しして、上半身半裸でパンツ一丁、そして体を縄で縛っている。

「いやお見合いでこの服装はおかしいだろ!!」

 僕がかなり興奮しているのに対し、連れてきてくれたメイドとメイド長は冷静だ。

「姫様、こちらをどうぞ」

「何これ?」

「はい、ムチでございます」

「いやいや、これが何かを聞いているんじゃなくて、何でこんなものを渡すのか聞いているんだけど」

「あちらの豚を叩くためです」

 オイ、王子様に豚とか言った言ったよ......このメイド。

「あれ? というかメイドさんうちのメイドさんじゃないよね?」

「はい。わたくしはぼっちゃ......この豚の世話をするように言いつけられて、この豚と一緒に来たメイドになります」

 道理で何か見たことない人だなって思ったわけだ。

「じゃあ、その豚の世話はメイドさんにお任せしますね」

 僕はムチをメイドさんに返す。

「そんなことおっしゃらずにお願いします」

 メイドさんはまた僕にムチを渡す。

「いやいやいや僕は別にそんな趣味ないから、メイドさんこそ使ってくださいよ」

 僕はムチをメイドさんに再び返す。

「いえいえいえここは婚約者である姫様の方がいいですよ」

 メイドさんはさらにもう一度僕にムチを渡す。

 というか婚約なんかしてないよ。お見合いだからねこれ。もはやお見合いと呼べるのかこれ?

「ふざけるなよ!! 何でこんなやつ相手にしなきゃいけないんだよ!!」

 アランが頬を赤く染める!!

「なんで頬を赤く染めているんだよ!! 言葉攻めじゃないからね!!」

「お願いします!! 姫様!! さっきのボディブローを見て『この人は逸材だ......結婚したい』ってアラン殿下が言ったんですよぉ」

 半裸の変態、泣きすがるメイド。何この状況?

「お願いしますよぉ。せめて、せめてわたしをここで雇ってくださいよぉ!! もうこんな仕事嫌なんですよぉ」

 何このメイドさん。就活にでも来たのかな?

「メイドさん名前は?」

「アスカです」

「アスカね、採用」

「やったぁ!!」

「さっそく、アスカに仕事を言いつけます。アラン殿下を着替えさせて城の外にお連れしなさい」

「姫様ぁああああ!? 結局私はこんな仕事なんですか!?」

 ということでアランとのお見合い?が終了した。

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