第8話 キャバクラのお姉さん本当に尊敬します

 僕の予想通り今日はお見合いをさせられている。

 そして何も会話がないまま1時間。これは新しい拷問ですか?

 僕は努力したよ? キャバクラ行ったことないけどキャバ嬢みたいに話題振ったよ?

 メイド長もそんなに睨まないでよ。僕は頑張ったんだから!!


・・・・・・・・・・・・


――――さかのぼること1時間前

「ロイド殿下がお見えになりました」

 今日は珍しく僕のほうが先に待機をしている。

「ロイド殿下、よろしくお願いします」

 僕は軽くロイド殿下に頭を下げる。

「あぁ......」

 え? それだけ? 何かしゃべれよ!!

「えっと、僕はアイネです」

「知ってる」

 いや、知ってるじゃなくてお前も名乗れよ!! さっき名前聞いたけど!!

「ロイド殿下はどんなところに住んでいるんですか?」

「海の近く......」

「へぇ?」

 他になんかあるだろ!! 海が近いなら「おいしい魚料理が食べられますよ、今度ご招待しましょうか」とか!!

 全く行きたくはないけれど!!

 にしても会話が続かん!!

 メイド長!! 助けて!!

 僕は目線でメイド長に助けを求める。

 すると白い歯を見せてグッジョブポーズで返してきた。

 え? 何? その指を折ればいいんですか?

 僕の力でメイド長の指が折れるとは思えないけれど......

 はい。ここまでが回想です!!

 で、結局話のネタも思いつかず今に至るというわけです。

 この人も無言で1時間も座り続けるとかどうなんだよ。

 用がないなら帰ってよ。

 その分僕の自由時間が増えるんだから!!

「姫」

「わっ......え? 何ですか?」

 まさかロイド殿下から話しかけてくるとは思わなかったからびっくりしてしまった。

「私はあなたのことを守らせてもらえませんか?」

 急に吐き気を催した。

 オイ!! どんなタイミングでの告白だよ!!

 いきなりだったから油断して気持ち悪くなっただろ!!

「丁重におことわ......」

 メイド長に両頬を右手でつままれた。

「にゃにふるんへすかへいほちょー(何するんですかメイド長)」

「いえ、少し頬の筋肉が強張っておりましたので」

 ウソつけ!! 僕が断ろうとしたからだろ!!

 ロイド殿下は立ち上がって最後に一言だけ言い残した。

「分りました。でも私は姫のこと諦めるつもりはありません」

 そのまま一礼して部屋を出て行った。

 そして僕は最後にどうしても突っ込みたかった。

 お前普通にしゃべれるんかい!!

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