第5話 男のツンデレとかマジやめてほしい
「先に言っておくけどな......お前のことなんてなんとも思ってねぇよ。その辺勘違いするんじゃないぞ」
僕が部屋に入ると怖い目つきをした青年は赤い長髪を揺らすことなく退屈そうな顔をしていきなり宣言してきた。
「そ。じゃあ僕はこの辺で......」
回れ右して部屋から出ようとする。
何かにぶつかった。見なくてもわかるぞ。そうメイド長だ。
「姫様帰れるとお思いで?」
「いやほら、なんか相手も乗り気じゃないみたいだし、中止ってことでいいんじゃない?」
メイド長に首をつままれ僕は結局椅子に座らさせられた。
な......なんて怪力だ。まるで僕を猫を運ぶかのようにつまみやがったぞ。
「人を待たせてて謝罪もないのかよ。お前常識ねぇな。そんなんじゃお前一生嫁にいけないんじゃねぇのか?」
僕は無言で立ち上がる。
「姫様、どちらに?」
メイド長がすかさず僕の進路を妨害する。
「いや、そろそろ帰っていいかなと」
「さっき帰ろうとしてから30秒もたってませんけど?」
メイド長が僕の肩を持ってそのまま椅子に座らせなおした。
なんだかホストクラブに単身乗り込んだ男になった気分だわ。
何かこんな男いそうだし。行ったことはないけど。
そんなことを考えていると視線を感じてこの男の方を見てみた。
「学習能力のない馬鹿な女だな。お前。でも俺のこと見つめるのは許してやってもいいけどな」
「はぁ? 男の顔見続けるとかどんな拷......」
「ひ~め~さ~ま~」
再びメイド長の圧を背後から感じる。
「オホホホホ、とても恥ずかしいのでお顔を見続けることができませんの」
眉間をピクピクさせながら必死に作り笑いをせざるをえなかった。
「あれ......そう言えば名前教えてもらったっけ?」
ふと僕は思い出したかのように目の前の男の名前を聞いた。
「お前にだけ特別に教えてやるよ。マルスだ、絶対に忘れるんじゃねえぞ」
あんたにだけと言っているが僕の背後にはメイド長がいるからメイド長にも教えていることになるんだけどね。
一応名乗られたしこっちも名乗り返さないとな。
「僕の名前は......」
「別にお前の名前なんて全然聞きたくねぇよ」
マルスに僕の言葉を遮られてしまった。
まあいいや名乗らなくて。
「名乗らなくて良いと思いますか?」
「メ、メ、メ、メイド長!? 何で僕の心を読めたんだ!?」
「私クラスのメイドにもなれば主人が何を考えているのか分かるのです」
恐ろしい......そんな能力者がこの世界にいるとは!?
「僕の名前はアイネです」
不本意ながらしぶしぶ名乗ってやった。
「俺はもう帰るぜ。でも俺が暇だったらきてやってもいいぜ」
こっちの迷惑も考えろよ。お前が暇でもこっちは毎日お見舞い続きになりそうなんだよ。
「いや別にもう来なくても......」
あ、この感じ。メイド長の気配だ......
「い、いつでもいらしてくださいね。お待ちしています」
上目づかいでまた来てほしそうな顔を作る。絶対今すごい美少女っぽい!! 絶対今自分可愛い自身あるわ!!
「仕方ねぇな......たまに来てやるよ」
内心では来てほしくないなと思いつつマルスを見送った。
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