第40話 第二家庭菜園 2
「相変わらず出鱈目ね、あんたのギフト……」
「ですねー、土地を開拓してきた先人たちが見たらきっと怒りますよー」
沼地が広大な菜園へと早変わりしていた。
「ええと、とりあえず適当な範囲を指定したけど、これくらい大丈夫ですかね?」
「いいと思いますよー。明確な境界線なんて最初からないですからー」
何ならもっと広げてもいいですよー、とリルカリリアさんは言うけど、そんなにあっても仕方がないのでひとまずこれで満足することにした。
―――――――――――
ジオの家庭菜園
レベル25 49/125
菜園面積:201000/840000000
スキル:塀生成 防壁生成 ガーディアン生成 メガガーディアン生成 菜園隠蔽 菜園間転移 菜園移動
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菜園面積が1000から201000になってる。
今までの200倍あるってことか……。
しかもこれでも840000000と比べると少ない。
どう考えても使い切れないよね。
「っ……魔物が来る」
シーファさんが槍を構えた。
沼地にいた何体かの魔物が、住処を奪われたせいか、怒り狂った様子でこっちに向かってくる。
「あ、大丈夫です。ゴーレムで撃退するので」
僕はそう言うと、四体のメガゴーレムを作り出した。
スキンヘッドを倒したやつだ。
「「「何これ!?」」」
みんなが驚く中、メガゴーレムたちは迫りくる魔物を迎え撃った。
さすが五メートル級のゴーレム。
その圧倒的なパワーで次々と魔物を撃退していく。
「たぶん放っておけば彼らが魔物を全滅させてくれるよ」
「やっぱり出鱈目すぎる……」
さらに僕は防壁生成を使い、菜園を防壁で守護することにした。
その高さはおよそ五メートル。
今までの狭い菜園では使えなかったけれど、ようやくこれも役に立った。
これでよっぽどの魔物でなければ、地上からの侵入は防げるだろう。
「家庭菜園……これが家庭菜園……?」
「アニィさん、気にしては負けですよー」
そうこうしている内に、ゴーレムたちが魔物を全滅させてくれたようだ。
「さーて、じゃあ早速、何か栽培してみようかな」
これだけ広いと何でも作れてしまう。
あ、そうだ。
みんなのお陰で手に入った新しい菜園だ。
そのお礼にちょっとしたサプライズをしてみよう。
僕はある作物を指定すると、それをこの広大な菜園すべてを使って栽培することにした。
「さて。せっかくなので、ここで夕食にしませんか? 大自然に囲まれてのバーベキューです」
「そんな用意してきてないでしょ?」
アニィが眉根を寄せているけれど、僕の予想が正しければきっと大丈夫だ。
「ちょっと一瞬、家に帰ってくる」
「は? なに言ってんの?」
〈菜園間を転移しますか?〉
はい。
次の瞬間、目の前にはいつも見慣れた我が家があった。
そう、ここはうちの庭にある菜園だ。
「ニャーッ!?」
いきなり僕が現れ、ミルクが驚いている。
やっぱり思った通りだ。
この菜園間転移というスキルは、どうやら菜園と菜園の間を瞬時に移動できるものらしい。
ミルクをもふもふしつつ、僕はバーベキューのための準備をする。
肉や野菜はこっちの菜園から収穫しよう。
「さて、これでよし、と。ミルク、お前も一緒に来るか? 失敗したらごめんだけど」
「ニャー?」
不思議そうな顔をしているミルクを抱き締め、僕は再び先ほどのスキルを使う。
〈菜園間を転移しますか?〉
はい。
「わっ! 今度はお兄ちゃんが現れた!? ミルクもいる!」
セナが目を丸くして仰天している。
どうやら上手くいったようだ。
「ニャーニャーッ!」
ミルクは広大な土地に大興奮し、全速力で走り出した。
やっぱりこれくらい広い方がいいんだなー。
「ジオ、どういうこと?」
「菜園と菜園の間を自由に転移できるみたいなんです」
「じゃ、じゃあ、あんた今、一瞬で自宅に戻ってたってこと?」
「うん」
これがあれば僕一人でも簡単に行き来できる。
途中で魔物に襲われる心配はないし、移動時間もゼロだ。
それに今みたいにミルクを連れてこようと思っても、街の人たちに姿を見られないで済む。
とても便利な能力だった。
「さて、それじゃ、バーベキューを始めよう」
「ねぇねぇ、なんかいっぱい生えてきてるよ!」
みんなで穫れたてのお肉や野菜を堪能していると、セナがそれに気づいて声を上げた。
見れば、いつの間にか菜園中に草が生え茂っていたのだ。
さらに注視していると、あちこちで蕾ができ始める。
そうして一気に開花していく。
「うわーっ」
「綺麗……」
「な、何よこれっ?」
「凄いですー」
赤、青、黄色、白、緑、紫、橙、水色――
一面に咲き誇ったのは色とりどりの花々。
それはまるで、神々が住む天上にあるという花の絨毯のようだった。
「ええと、僕からのお礼です」
「ジオさん、見かけによらず粋なことしますねー」
見かけによらずは余計だと思います。
「もしかして今日がお兄ちゃん史上、一番かっこいいんじゃない? 未来も含めて」
「こら。未来を含めるな」
相変わらず酷いことを言う妹だが、その顔には花のような笑みが咲いている。
「アニィ? どうしたんだ?」
「……な、何でもないわよっ!」
なぜかアニィは俺とは逆方向に顔を背けていた。
男勝りなアニィにはあまり花の良さは分からなかったかな?
「ジオ、とても綺麗。ありがとう」
「い、いえ、喜んでいただけたなら僕も嬉しいです」
シーファさんも花に負けないくらい綺麗だと思います。
なんて、口に出しては言えないけど。
「ニャーニャーッ!」
「あっ、ちょっ、ミルク!? 花をめちゃくちゃにしないで!」
初めてみる花畑に興奮してしまったのか、ミルクが思い切り走り回ってしまう。
僕は慌てて止めに行くのだった。
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