第15話 消えゆく灯り

加奈さん

どうしたの

泣いて


気づかれたかもしれません


そうか


すぐ逃げなければいけないです


そうだな

どこに逃げるか


もっと人が住んでいない町

いや、町じゃない

どこかないか


優一さん

スーパーで親切な方がいらっしゃいます

相談してみます


でも、大丈夫か


信じるしかないです


おそらく、最初の不動産もお父様から調べられているから

その方を頼るしかないです

私と同じ日に入ったアルバイトの方なのです


わかった



松下さん

実は


瀬波さん、ここに来たら駄目だよ

もう、店長が連絡したみたいだよ


そうなのですか


何とかならないでしょうか


ここから4キロくらい山に行ったところに

小さな集落があるから

そこにとりあえず逃げて

僕は秘密にしているから

大丈夫


ありがとうございます


優一さん

山の集落に逃げましょう

すぐ、お父様達は追いかけてくるでしょうから


わかった

すぐ行こう



娘がお世話になりました

ところで娘は


それが昨日から姿をみせなくて


なに、逃げたのか


そう、遠くへは行っていないはずです


よし、隣の町を探そう

佐藤、わかったな


はい

すぐ手配します



おや

二人ともそこの木陰でどうしたの

はい、色々ありまして


こんな山奥の集落にいるということは何か事情があるのね


実は・・・


私はこの集落で商店をしているの

よかったら

私の家に住みなさい


いいのでしょうか


ああ

あなたは

私の娘に似ているよ

もう、亡くなったのだけどね


そうなんですか


うちのお店は豆腐を作っていて

あなたは店の奥で準備を手伝って


はい



一週間後


よかったですね

まさか、こんな小さな集落に住んでいるとは思わないから


そうだよ

ここは10軒しか住んでいないところだから

みんな事情があってここに住んでいるから大丈夫よ

よかったね、加奈さん


はい


加奈さんはもう私の娘だよ


はい

ありがとうございます


豆腐が売れたお金は加奈さんに全部あげるから


いえ

それは駄目です


いいのよ


私は加奈さんがそばにいてくれるだけで

娘が帰って来てくれたみたいで

うれしいの


加奈さん

できれば、また海に行きたいね


はい、沖縄の海はやはり綺麗ですね


そうだよね

加奈さんの溺れる姿が可愛かったよ


もう、からかわないで下さい


また行けるといいね


そうですね

今から、料理をつくりますね


今日は何かな


秘密です



店長はいらっしゃいますか


私が店長の外山といいます


誰か心当たりのある奴はいないですか


いえ、でもそういえば


そういえば、松下と親しかったな


そうですね、店長


もしかしたら知っているかもしれません

仲が良かった者がいたので


お前が松下か

この新聞の女性を知っているだろう


いえ


本当か


はい


嘘をつくと

ただじゃすまないぞ


はい


お前には小さな子供がいるそうだな

気をつけることだな


すみません

実は


そうか

心配するな


よく教えてくれた



加奈さんの料理はいつも美味しいよ


そんなことはないですよ


おい、ドン、ドン、ドン、優一の家か


そうですが


ここを開けろ


優一さん、駄目です

きっと、あの人達です


ガン、バン

なぜ、すぐ出ない


あなた達は、優一さんを連れて行くつもりでしょ


ああ、そうだ


やめろ


ほら、開いたぞ


バシ、バシ、ガン


気絶しやがったぜ

連れて行け


やめてください、お願いします

助けてください


助けるも何も優一は明日

ドラム缶に入れられて

海に沈められるんだ

可哀そうだな


お嬢様に手をだしたばかりに


やめてください、やめてください

お願いします、お願いします


わあああ


お嬢さん、いくら叫んでも駄目なんだよ

ある方の命令なんだよ

悪いな


駄目、離して


どきな


おい、お嬢様には丁重に扱えと言っただろ


はい、佐藤さん


連れて行ってあげなさい

怪我をさせたらただではすまないからな


わかりました


ああ、俺も今日までの命か

お母さん、ありがとう

幸せな人生だったよ

でも、なによりも加奈さんと出会えて

幸せだったよ


加奈さん

ありがとう

さようなら

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る