第16話 偽り

もしもし

お父様


ああ、加奈、悪く思わないでくれ

すべては、加奈の幸せのためなんだ

怪我はなかったか

大丈夫か

北川原先生がお待ちだからすぐ帰ってきなさい


お父さんお願いがあるの


また死ぬといいだすのか

もう、あの手は使えないぞ


いえ、私はおとなしく北川原さんと結婚しますから

優一さんだけは助けて

お願い

あとは、なんでも聞きますから

お願いします

それが結婚の条件です


ああ、仕方ないな北川原先生と結婚するのなら

優一は生きて返そう


そのかわり絶対に乱暴にしないでください

約束できますか


わかった

そのかわり北川原先生と結婚するんだぞ

優一というやつとは別れるんだぞ


わかりました


よかったな

優一君

東京に無事に帰れるよ

死なずにすむんだぞ

海に沈められてな

 

加奈さん、今頃どうしているだろう

大丈夫だろうか

ぼくは、加奈さんと会った公園にきているよ

どうしてこのような思いをしないといけないんだ

なぜ、僕と君は結ばれないのか

沖縄にいって幸せになるはずだった

加奈さんは一生懸命がんばっていた

僕も頑張ったつもりだよ

この先どうなるのだろう

いっそのこと僕の存在がなくなればいいのにな

でも、加奈さんが悲しむかな

それ以前にもう会えないのか

学力の差、家柄の差

残念ながらそうだよね


加奈、北川原先生から電話だ


はい、私、国会議員の北川原と申します


突然ですが明日、予定が入ってらっしゃいますか


いえ


ホテル

シャインビューホテルで昼食でもどうでしょうか


はい、わかりました・・・・


場所はご存じですか


はい


それでは、明日の11時で予約しておきます


はじめまして

国会議員、青年部の部長を務めております

北川原と申します


瀬波加奈と申します・・・・・


さあ、どうぞおかけください

今日はこのホテルを5千万で貸切っております

また、昼食を担当しているシェフは陳投稿でして

瀬波財閥、山田シェフのライバルとして有名な方ですよ

どうでしょうか、この素晴らしい空間を

僕とあなただけですよ


はい・・・・・


加奈さんは趣味は何をでしょうか


はい・・・・・


ああ、疲れていらっしゃるのですね

僕はゴルフにサーフィンです


はい・・・・・・


加奈さんは・・・

ゴルフはされるのでしょうか


はい・・・・・


ああ、質問が

あまりよくなかったですね



はい・・・・・


はい・・・・・



どうされました

疲れていらっしゃるのですか


はい・・・・・・


どうして、はいしか言われないのですか

返事もされなかったたり


はい・・・・


部屋で休みましょう

ここが205号室です

ゆっくり休んでいて下さい

僕も後から行きますので


駄目です、いやです

私には好きな人がいます


ああ、知っているよ

優一という

ドブネズミでどうしようもないらしいな


違います

あの方は心が優しくて誠実な方です

あなたのように

お金でなんでも支配するような方ではありません

あなたこそドブネズミです


なんだと、ほら


やめてください、やめてください

ハハハハ


僕はお父様と違って

暴力団に頼むことはできないが

優一という男と母は仕事ができなくしてやる


なぜですか


ああ、ぼくの力さえあればこの社会は

どうにでもなるんだよ

とにかく収入は全くなくなる

生活できなくなるな


そんな


ほら、わかっただろ

部屋で休んでいろ

今日は僕も泊まるから


はい・・・・


いい夜だったな


・・・・・


大丈夫だ

お父様には伝えてあるから


村田君、ちょっと


はい


申し訳ないが仕事は今日までにしてくれないか


どうしてですか


まあ、いろいろあってな

退職金は振り込んでおくから


村田さん


はい


パートは大変だろ

そろそろ自宅でゆっくりした方がよくないか

年齢も年齢だから


いえ、それでは生活が困ります

どうか、ここで働かせてください


どうして、突然なのですか

山内さんも一生懸命働いてきたのはわかります

でも、この世の中いろいろあるのですよ


わかりました


加奈さん、僕達、家族はもう生きていけない

働くところが、辞めさせられたうえ

就職しようにも、なぜか断られるんだ

もしかして・・・


優一さん、ごめんなさい、ごめんなさい

・・・・


加奈さん、北川原議員と婚約したんだろう

どちらにしても会ったらいけないんだ


いえ、大丈夫です

なんとかします


いや、ここでお別れしよう

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