第53話 「いつか」

まっくらのなかにある


まっくろなハコのなかで


なまえを


なんども なんども


よんでいた


ふたがあいた


そのさきに


「みつけた」



じゆうにひろいそらにとびだしていったら


このせかいはどんなふうにうつるんだろう


わたしはいったい


なにをするんだろう


どこへいくんだろう


なにをさがしてなにをみつけるんだろう


だから


とびたしてみた


じぶんのおもうままに


いきたいところにいってみよう


さがしたいものをさがしてみよう


みつけよう


このおおきなつばさがあるから



きがつけば


いつもよるになっている


よるのあいだしかじゆうがない


あさになるとかえらないといけない


かえるときにはみつからないところにいないと


おどろかせてしまうから


このまちには


たくさんたかいたてものもあるし


そこにいけばみつからない


このあおいつばさでとんでいける



はなしができて


うれしかったな


あんしんしたな


だからもう


こまらせたりしないように


にげられたりしないように


みつからないように


たかいところから


ただただ


ずっとみていよう



あたたかいな


うれしいな


しあわせだな


いつまでもずっとこのまま


みていたいな


ずっとこのまま


ここにいてもいいのかな



ふかいふかい


ぎゅっとするところにうまれた


すきっていうおもい


つながったそのさきをみつけに


とんでいった


どうしてなのってきかれたけれど


よくわからない


ただ


あおいおおきなつばさをもらったから


じゆうにおもいのまま


いきたいばしょにとんでいって


さがしたいものをさがして


みつけたから


つながったそのさきを


みつけたから



そらへのおてがみは


いつでもじゆうにかける


そらからのおへんじは


いつもかえってきている


でも


きづかないと


みつけられない


かなっていることにきづけない


ほしかったものとちがっていても


すがたやかたちが


おもっていたのとちがっていても


そらからのおへんじは


いつもかえってきている



なくなってしまうまえに


はなせるといいな


つたわるといいな



いつか


ねがいが


かなうといいな


なくなってしまっても


きっと


ずっと


ずうっと


ふかいところは


わすれないから


いつか


ねがいが


かなうといいな


うれしい


たのしい


いろんなところがすごくはずんで


からだいっぱいでとびはねる


きらきらしたきもちになる


すきっていうきもちのずっとおくにあった


ただただ


きらきらしたはずむようなきもち


からだもこころも


ぜんぶぜんぶ


ただただ


しあわせがあふれているきもち



すきがうまれて


まいにちがとてもかがやいていた


まいにちがとてもたのしかった


すきがうまれて


ただただ


しあわせだった


なのに


とつぜんとじこめられた


むりやりとじこめられて


くるしくて


つらくて


そんなのほんとはいやで


でも


むりやりぎゅうぎゅうに


おしこめられて


みえないところへおきざりにされた


きこえないけれど


とどかないけれど


いっぱいいっぱいさけんで


そうして


まっくらなところからとびだした


すきっていうきもちのずっとおくにあったのは


きっと


ほんとうのきもちに


ただただ


しょうじきな


ほんとうのじぶん


とじこめたのは


きっと


ほんとうのきもちに


ただただ


しょうじきになれなかった


こわがりな


ほんとうのじぶん


とびだしたじぶんと


とじこめたじぶん


どっちもたいせつな


ほんとうのじぶん


ちゃんと


すきがうまれたときのじぶんをおもいだしたら


もとにもどれるよね


どっちもたいせつな


ほんとうのじぶん


どっちもだいすきな


ほんとうのじぶん



すきっていうきもちの


ずっとおくにたいせつにしまってあったのは


きらきらかがやいてるすがたに


いつもいつも


しあわせをもらっていたこと


がんばってるすがたに


いつもいつも


げんきをもらっていたこと


そして


いつもいつも


あのひとのしあわせを


ただただ


それだけをいつもねがっていたこと


すきっていうきもちの


ずっとずうっと


そのさきにあったのは


とくべつになることなんかじゃない


ただただ


たいせつなひとのしあわせを


それだけをいつもねがっていたこと


ほんとうのじぶんが


こころからのぞんでいた


ほんとうのねがいが


ほんとうに


かなうよ



さらさら


さらさら



なかないで



はらはら


はらはら



かなしまないで



なくなってしまっても


わすれてしまっても



すきがうまれたずっとふかいところにある


ぎゅっとするところは



ずっと


ずうっと



なくならないから


おぼえているから



かたちがかわってしまっていても


おもったすがたになっていなくても



いつか



いつか



・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る