大人は大人で大変そうだ
「お前。絵梨花ちゃんに何かしたのか?」
自分の実の父から少しきつめの視線を向けられる。だか、こちらはそのような視線を向けられる筋合いはないと思いたい。
「俺は何もしてない…。と。信じたい」
「そういう時、大概何かしでかしているという事をお前はまだ知らないようだ」
「子供だからな」
「その言葉やっぱ便利だな。俺も使いたい」
「使えば」
父さんの言葉に対してなんとも責任のない言葉。まぁ、親子間のそれもそこまで真面目でもない会話なんてこんなものである。
「俺の社会的地位と引き換えになるからそれはできない」
「デメリットがなければ使いたいというような表現だな」
「それであってる。大人はほら、自由と引き換えに色々な義務があるしな。それどころか、時に自分の自由すら恐ろしく制限されることだってある」
「子供は鼻から制限されてるけどな」
「いい感じに拗らせてるな。高校生としては健全だ。少し拗らせが足りないくらいだ」
俺の回答のどこに満足したのか分からないが、父さんは嬉しそうだ。
というか、俺はそこまでこじれた人間でないと信じているためそれはやめていただきたい。
「しかしだな…先に言っとくが、それは正しいが認識には誤りがある。いいか?子供はな自由を確かに制約されてる。それは間違いない。だがな、その分義務も負わない。つまりそれ以上制約されることはまずないんだよ」
「そうか?」
「そうだよ。大人はほら確かに自由だが、それは勝ち取らないといけない。じゃなければ、子供以上に不自由な私生活になる」
「うあ。聞きたくなかった」
いやほんと聞きたくなかった。
一応これでも憧れというのはあったんだから現実を見せないでほしかった。
大人になりたくないでござる。というクソみたいな思いが出てきてしまう。
「そんなもんだ。大人に対して希望を抱きすぎだ。……と。話が逸れたな。それでなにをした?」
「分からん」
「本当に?」
「分かれば謝ってる」
「確かにそれは大事だ。謝れば、その問題で身動きできないなんてことがなくなるからな。なら聞いてみたらどうだ?」
「もしかしてなんて怒ってるのか分からないから教えて?とでも」
個人的にはそれはないと思うものなんだが。父さんは違うようだ。
「そのまさかだぞ?どうせ分からんなら本人に聞け。幸い絵梨花ちゃんはそこまで心が狭い人間じゃない。呆れられながら教えてくれるじゃないか?」
「呆れられはするんだな」
苦笑いに応えるとそらそうだという反応。
「さっさと機嫌とってこいよ。大丈夫だ」
「きっとうまくいく?」
「いや。ないもしないよりはマシな目にあえる」
「その表現は大丈夫じゃない」
だが会話はこれで終いのようだ。父さんは何処か多分自殺だろうがに行ってしまった。
「仕方ない」
そう言いながら重い尻を上げる。どうせろくな間に合わないなら、マシな方を選ぶとしよう。
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