ショッピングでの出来事 その2

 二人して肉を食べた後、食欲がそれなりに旺盛な絵梨花とそれに釣られた俺は、結局デザートまで食べることとなった。

 案外高い出費に悲しみを覚えながらも、デザートはそれなりに美味い物で、確かな満足感を感じていた。


 そんなこんなで、買い物を再開する。

 絵梨香は食べている間に何を買うべきかを決めていたのか、俺の手を引っ張り、店へと連行する。

 そしてその店で服を二、三着ほど購入していた。

 因みにそれだけで一万円を超えていた事実に、やはり服は高いということを再認識させられた。


「いや〜。買った買った」

「小遣いは大丈夫なのか?」

「やばい」

「お疲れ」


 くだらない会話をしながら、本来の目的である食器を見ることにする。


「どうする?絵梨香は好みがあるなら合わせるぞ?」

「別にシンプルで使いやすければ特になんでも」

「なら適当に見て、そこで互いの好みを擦り合わせるか」


 ここはショッピングモール日用雑貨であれば大概揃うことが可能であり、時間もまだまだある。

 俺と絵梨花は先ほどの服同様、様々な店を見回ることにした。

 目的は食器ではあるが、それ以外にも揃えるべきものは多々あり、思い出しては、その商品が納得いくものであれば購入していた。

 そして買うべきものが大体揃ったあたりで絵梨香は思い出したかのように俺に質問を投げかけてきた。


「結構買ったし、一つ一つそれなりにするけどいいの?」

「大丈夫。軍資金はここにあるからな」

「いつの間に?」

「絵梨香が支度している間に、仕事に出かけた父さんにな。そしたら金のありかを教えてくれて使えってさ。お互い信頼されてよかったな」

「どういうこと?」

「子供とは言え、大金を持たせるんだ。しかも買う用途に対しての裁量は大きい。それを任せてくれたんだ。義母さん、絵梨香をよく褒めていたと父さんがいっていた」

「〜〜〜っ」


 そういうと絵梨香は真っ赤な顔をする。どうやら恥ずかしかったのだろう。その気持ちはわかる。俺ですらそのことを聞いたことで、絵梨香の信頼を高めたのと同時にどうも、どこかむず痒い感覚を味わっていたのだから。

 当事者たる絵梨香はそれよりもきついだろう。


 何か声をかけるべきか?と感じたが、何を声をかけるのかはわからないので見守ることにした。


「……何か言ってよ」


 どうやらこの態度は不服のようだ。


「揶揄う言葉ぐらいしか出ないよ?」


 そう言った瞬間、俺の脛を少し力を込めて蹴られた。

 ……一応さっき買った食器を持っているのだが。


「そういうことなら。さっさと次行きましょ」

「次は?」

「おっ!絵梨花じゃん」


 後ろから女性の声が聞こえてきた。絵梨香のことを知っていることから友達だろう。

 絵梨香の様子からもどうやら辺りだ。

 振り返ってその人物をみると、友達おろか、クラスメイトである。名前は、そう確か西村だったかな?下の名前は申し訳ないが覚えていない。

 さらにその背後には同じく女性が2人ほど。こちらはクラスメイトでもないからわからない。


「あっ!芽衣じゃん」

「なになにデート?」

「そんなところ」


 デートではないだろと心で突っ込むが、会話に入る勇気はないので声には出さなかった。


 そんな俺の考えは気にせず彼女たちは会話を続けながら、芽衣?というクラスメイトは俺のことを視界に入れる。

 そうすると彼女は俺に話しかけてきた。


「相木君?だよね。あっ!そうかそうか。兄弟になったんだったよね。クラス中その話題で持ちきりだったもん」

「西村であってるよな?あの時は今までで一番話しかけられた記憶があるよ」

「名前知ってたんだ。てっきり興味ないものかと。話変えてみたら案外そうでもないんだね」


 その言葉で朝の会話を思い出す。

 どうも俺は少し近寄り難い人物であるという話をだ。


「そんなに冷たい態度をとったつもりはないのだが……」


 改めて突きつけられると少しショックである。


「いや〜。イメージというものがあるじゃん?ちょっと目つきが鋭いところあったからそうなんだよ。まぁそれもこの三日間で崩れたと思うよ?それに私は、絵梨香から―――」


 そう言いかけて西村の口は思いっきり絵梨香に防がれる。

 勢い余って鼻まで抑えているからとても苦しそうだ。


「……お友達しにかけてるぞ?」

「あっ。ご、ごめん」

「……いいの。調子に乗った報いだから」

「罰が重いな」

「そんなことないよ?人のこういうことに野次馬根性で入り込んだらこの程度は覚悟しとくもんだしね?」


 あっけらかんと答える彼女はなかなか月焼いやすい人なのかもしれない。


「それじゃ!私は行くね。友達待たせてるし。それに絵梨花も会話に入れず拗ねてるし」


 西村はそう言って早足でその場をさっていった。


「拗ねてるのか?」

「別に」

「ワロス」


 次の瞬間、先ほど以上の威力の蹴りを脛に喰らう羽目になった。

 だが、これに関しては明らかに俺が悪いので、文句も言えなかった。


 クラスメイトとの遭遇以降は、特に変わったこともなく、俺と絵梨香はお目当てのものを手に入れて、火が落ちる少し前に帰宅したのであった。


 その間、俺は少し気になることもあったが、帰宅と共にそんなことは忘れていた。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る