ショッピングでの出来事

「やっぱり人が多いね」

「さすが日曜日と言ったところだな」


 俺と絵梨香は、あれから約1時間後ショッピングモールに来ていた。場所的には自宅から十数分ほどで着くが、やはり絵梨香は女性ということもあり、準備に時間がかかったようだ。


「いや〜。ちょっと時間かかってごめんね」

「別に気にしてないよ。それに二人とも朝は早かったし、あまり早く行っていたらそもそも店が空いてなかったんだから」

「確かに」


 そう言いながらぶらぶらと店を見回ることに決める。


「さて。どうする?絵梨香は何が見たいんだ?食器類は見るとしてもあれは物が物だから最後にしたいから、先にそっちを優先するぞ」

「そうだね。服が見たい!」

「おや?それはまた別件では?」

「えっ?ショッピングに来たのだから服を見るのは当然予想してたでしょ」

「いや全然」

「それは残念。だけど付き合うと言ったんだから付き合ってもらいます」


 そう言って手を引っ張られ店に連れられる。


「見てみてこれとかいいじゃない」

「ああ確かに。色合いもよく似合ってるな」

「じゃ。これは第一候補」

「しかし服って高いよな。一枚五千円それでも、マシだけど、買うかどうかかなり迷う。そして買わない」

「え〜。でも買わないとおしゃれできないじゃん」

「元々それが目的じゃない人間がいることを知っておいてほしいよ」

「えっ!おしゃれ以外になんで服買うの!」

「社会生活を続けるためという発想ない?」


 この女性は、なんというか吹っ切れた人間のような気がした。まぁ。いいけど。


 それからも別の店、さらに別の店を巡りに巡り、真剣に何を買うのか吟味していた。

 ちなみに既に1時間が過ぎており、俺の体力はゴリゴリ削られていく。俺だけお茶していていいかな?だめだね。知ってる。

 だが、流石に昼時に近づいてきたことでもあるし、ここはひとつ休憩がてら飯にしたい。それにまだまだ買い物は続きそうな雰囲気。具体的には後2時間は拘束される未来が見えている。そのため、休憩は挟んどくべきである。


「一回早めの昼飯にしないか?今ならまだ混雑してないようだし。食べ終えてからまた見ないか?」

「それもそうだね。だいぶ絞れてきたし、一度整理しときたいし」

「?そうなのか。てっきり俺は後2時間はかかるものだとばかり」

「そんなにはかからないよ。それをするのはアウトレットとか言った時で本気で服を見まくる日にとっとくよ」

「それはそれは」


 正直、その日はぜひ友達と共に仲良くみてほしい物である。

 ……なんとなく一緒に行ってそうで怖い


 今絶妙にフラグを作った気がするが、気にしないことにした


 それから絵梨香と俺は移動してフードコートのエリアに来ていた。

 人は12時に近づいてきたこともありだいぶ増えてきたが、まだまだ大丈夫そうだ。

 席はまだ空席が見る。


「何が食べたいんだ?」

「う〜ん。肉!」

「肉食」

「そういう気分あるでしょ?」

「わかる」


 何せ俺の今の気分もまた肉である。

 肉最高!


「それじゃあ、ステーキでも買うか?なんだったら買いに行くが」

「そうだね」

「サイズは?」

「普通」

「サイドは?」

「なしで」

「了解」


 そこまで聞くと俺は、飯を買いに行く。絵梨香はそれを後ろから見送る。

 それからなんだかんだあって二人とも注文したメニューが届いたところで食事を開始し始める。

 周囲は既に人混みで溢れていた。後少し遅く来ていたら、フードコート特有の席が空いていないか探しまくる人間になっていた。


 絵梨香も腹が減っていたのか、それはもう美味しそうに肉を食べていた。

 特に考えていなかったが、女子と二人っきりであるのだからもう少し洒落たところにでも行けばいいのではとも思わなくもないが、日が浅いとはいえ兄妹。この程度で済ましといたほうがいいようにも思える。

 別にデートというわけでもないのだから。

 流石にデートであれば、俺ももう少し考える。本当だよ?したことないけど。それくらい考えますよ?


「今日はただの買い物だけど。次はちゃんとデートしようよ」


 くだらないことを考えているなと思っていると。こちらのことを見透かしたような言葉が飛んできた。

 思わず食べていた物が別の期間に入りそうになり、思わずむせてしまった。しかし今のは仕方ない。


 俺は一度水を一気に飲み干し、気持ちを落ち着かせると、全く中身のない日常会話をするように問いかける。


「俺たちは兄妹だぞ?」

「いいじゃん。兄妹だからと言ってしては行けないなんてことないし。それにまだ日も浅いじゃん。ここはひとつ親睦を深める意味も込めて。……ダメかな?」


 その問いかけはずるいと思う。絵梨香は正直言って学校内でも人気の魅力的な女性である。

 告白を振った身であるにしてもそのようなお願いは断れない。


「別にだめじゃない。やろうか」

「よし!じゃぁ。来週予定空けておいてね。日曜日だよ」


 絵梨香は俺の回答に満足したのか、再び自分の肉に集中し始める。


 ……本当にいいのだろうか?なんてことも一瞬頭によぎったが、兄弟になって紐浅いという事実と気まずい事情も相まって、距離感をいまいち図りかねている。ならば、絵梨香のいう通り親睦を深めるために行ってもいいだろう。


 俺はそう結論付けて、飯に取りかかることにした。


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