第33話 ひょっとこナツ太郎


 する事もないので、スマホをポチポチ。

 気になるニュースは……


 お、これなんかよさそうだな。


『ネットで話題沸騰中!天才中学生、凄腕ギターを披露』


 同じ中学生としてジェラっちゃうな。

 とりあえず動画を見てみるか……


 なになに……ひょっとこナツ太郎?

 変な名前でやってんだな。


 ん?


 ……んん??


 …………


「ハナー!!!!」


 ◇  ◇  ◇


「ご、ごめんね?」


「説明してくれる?」


 動画に映し出されていたのは、ひょっとこをつけた俺がギターを弾いているものだった。


 確かにそんな機会は何度かあったけど……


「私の提案よ!」


 勢いよくドアを開け、ドヤ顔でハナママは登場した。


「ハナママが?」


「夏ちゃん、15歳だよね? こう言ったらなんだけど……異常よ? そんなに弾ける中学生いないと思う。だからプロデュースしてみたの」


「私がプロデューサーでーす♪」


「……このひょっとこナツ太郎って名前は?」


「私が考えたんだよ! 可愛いでしょ♪」


 ひょっとこナツ太郎……


【ナツタロサァン!!】


「凄い人気なんだよ? 登録者数80万人で投稿した動画は殆どが100万回以上再生されてるし!」


「へー……」


「ママの名義でやってるから収益もあるんだよ! ゆくゆくは私がマネージャーをして仕事中もナツと一緒にいるのが夢なんだー♪」


 俺の知らない所で……

 まぁハナとは四六時中一緒にいたいけど。


【ナツタロサァン!!】


 それやめてくれる?


【ナツタロサァン……】


「まぁなんとなく理解したけど……その、せめて一言……ね?」


「ごめんなさい……」


 ションボリするハナ。

 可愛い。


 しかしあまり有名になっても……

 あの事件は世間的にも厄介な事件だし、その当事者ってバレたら……

 ハナも普通に生活出来なくなるかもしれない。

 おまけにおじいちゃんは有名なYakuzaだし……


 どうしたものかな……


「ナツが困るならやめるよ?」


「うーん……そうした方が良さそうな気が……」


「でも勿体ないわね。結構収益あるのに」


「ちなみにどれくらいですか?」


 ハナママは指で数字を作る。

 

「えっ!!? マ、マジで?」


「マジマジよ?」


 サラリーマンだった俺が汗水垂らして働いていた一月分を、ひょっとこナツ太郎は軽々と超えていく。



 おもむろにひょっとこを装着し、ギターをチューニングする。

 

「……プロデューサー、何を弾きましょうか」


「ナツ太郎……よーし、じゃんじゃん弾いてもらうよー♪」


 かくして本人公認ひょっとこナツ太郎の誕生である。

 

 自分も動画に出たいと言い、おかめのお面をつけたおかめハナ子が誕生するが、それはまた別の話。

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