第34話 後悔しない為に
夏休みも終わりを迎え、いよいよ学校が始まる。
けど、姫はご不満の様子で……
「終わっちゃうーーー!! イヤーーー!!」
手足をバタつかせベッドで駄々るハナ。
その気持ちはよく分かるけど……
「でもほら、夏休みが終わったらさ、アレがあるでしょ?」
「うん……でも……」
「でも?」
「ナツと離れ離れになっちゃう」
確かに、夏休みの間は常に一緒にいた。
隣にいるのが当たり前で……
学校が始まれば授業の間は別々。
……私だって寂しいよ。
「……そうだね、離れ離れだね。私も嫌だな」
「うん……」
女子二人でおセンチになる。
学校か……
「ハナ、ちょっとお出かけしない?」
「うん、する!」
◇ ◇ ◇
ネットで頼んだ可愛い服。
何が正解なのかサッパリ分からなかったけど、自分なりに選んでみた。
似合っているといいけどな……
「ナツ、その服いつ買ったの?」
「この前ね。変かな……?」
「ううん、すっごく似合ってるよ。可愛い♪」
「あははっ、ありがと」
大きめの日傘を仲良く半分こ。
まだまだ残暑、今日も真夏日だ。
「それで、どこに行くの?」
「いいからいいから」
それは、毎日歩く道。
この道はあと何回歩くのだろうか。
「ナツ……もしかして学校に向かってる?」
「正解♪ 明日だと意味がないから」
門を抜け、下駄箱から靴を取り出す。
何度も繰り返す、いつもの動作。
静まり返った廊下、人の気配は無い。
「こんなに静かだとなんだか別の場所みたい。あーあ、早く冬休みにならないかなー」
教室の前に到着。
いつもはここでお別れだけど、今日は同じ場所へ行く。
「ハナの椅子に座ってもいい?」
「うん、どうぞ♪」
ハナの机、隅にはマジックで “ナツ” と書いてある。
いつも私の事を想ってくれているんだね。
「……いつも、こんな景色が見えてるんだね」
「でもナツがいないから退屈だよ」
「……私の椅子にも座ってみる?」
「座るー♪」
クラスを跨いで私の席につくハナ。
嬉しそうにその景色を満喫し、愛しそうに机を見つめている。
「ふふっ、ナツの机……落書きしちゃお」
油性マジックでひょっとこの絵を書き始めた。
授業中にこんなの見たら笑っちゃうよ。
「この机に私が座るのは、あと何回かな?」
「えっ?」
「ハナと一緒に……登下校するのも、お昼ご飯を食べるのも、あと何回かな。きっと、これから先この景色を思い出すんだろうけど……悔いが無いようにしたいよね」
「悔い……」
「この学校は私とハナが出会った場所で……ハナと中学生っていう時代を過ごす場所で……卒業したらもう二度と体験出来ない場所。授業中は寂しいけど、同じ時に同じ場所で同じように私もハナの事を想ってるから……それは一つの思い出だと思う。色んな思い出を、もっとハナと作りたい。ここでしか作れない思い出、一緒に作ろ?」
「ナツ………」
私からキスをする。
思い返すと、自分からしたのって殆ど無いや。
それだけ愛されてる。
「ふふっ♪ いけない事してるみたいだね」
「……ハナ大好きだよ。いつもハナの事、考えてるから。だから、明日から頑張れるかな?」
「うん! 頑張る♪ 私にはナツがいるから。かかってこーい!」
ハナも俺も、やる気をチャージ出来たみたい。
せっかく訪れたJC生活。
満喫しなきゃ勿体ないもんね。
夏休みが終わる。
次に控えるBIGイベントは……
「ナツ、修学旅行の服買いに行こ♪」
修学旅行。いい響きだ。
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