第20話 溝口ハナ


 私の名前は溝口ハナ。

 赤い髪の毛と青い瞳がちょっとだけ目立つけど、普通の中学生。


 そんな私に最近恋人が出来た。


 ナツっていう可愛い子なんだけど……

 優しくて、頼りになって、やっぱり可愛くて……

 時折見せる大人びた表情が格好良くて。


 誰にも言えないけど、私の自慢の恋人。


 そんなナツと2泊3日で旅行に来てる。

 今日はどんな一日になるのかな。 


 ◇  ◇  ◇


 朝目が覚める。

 ナツはまだ寝てるみたい。


 昨日の夜は……ふふっ、ナツ可愛かったなー。

 恥ずかしかったけど、素敵な夜だった。

 ナツとなら何時だって……

 って朝から不純かな。

 ……でもそれくらい、好きな人。


「んー……ん……ハナ、おはよ……」


「おはよ♪ お目覚めはどう?」


「……うん、いい感じ。ちょっとだけ足腰が痛いかな」


「ふふっ。ね、私も♪」


 ナツを見つめてると、気がついたみたいで目を下にそらした。

 少しだけ顔が赤くなってて、襟足を摘んでる。

 ナツが照れてる時にやる癖。

 多分ナツも気づいてない。

 私だけが知ってる、ナツの癖。


「そ、そうだ、もう朝食だよね。今顔洗ってくるよ」


 縒れた浴衣も、後ろ姿も、愛しくて。

 つい後ろから抱きついてしまう。


「ハナ……どうしたの?」


「理由なんてないよ。こうしたいからしただけ」


「うん……ハナ……」


 ナツの声がトーンダウンする。

 少しだけ甘い感じ。


 こういう時は、私を求めてくれてる。

 それが凄く嬉しくて。


 私が顔を近づけると、ナツは目を瞑る。

 写真に撮っておきたいくらい可愛い。


 でも私も我慢出来ないから、キスをする。

  

「ふふっ、ナツ大好き」


「私も大好きだよ」


 朝から幸せいっぱい。


 ◇  ◇  ◇


「わー、砂浜が白いよ! ナツ、見てみて!」


「ホント、海も綺麗だし」


 そう言ってるナツは内股で前屈みになってる。

 相変わらず、水着が恥ずかしいみたい。

 可愛いのに。


「私、海に泳ぎにくるの初めて。初めてがナツで良かった♪」


「私も、ハナとは初めてづくしだよ」


 お互いにニコニコしていると、知らない男の人に声をかけられた。


 ナツは可愛いからよくナンパされる。

 私はついで。

 髪の毛目立つし。


 でもこういう時、ナツは必ず私を守ってくれる。

 今も男の人のお股を蹴り上げて睨みつけてる。


「ハナ、大丈夫?」


 私の事を心配してくれる。

 自惚れかもしれないけど、私の事を一番に考えてくれる。


「ハナ、かき氷買おうよ。何味がいい?」


「うーん……ブルーハワイかな?」


「あははっ、そう思った」


「えっ! なんでなんで!?」


「なんででしょう」


 その眼差しに、ドキドキしてしまう。

 思わず顔が熱くなる。


 私は本当に、ナツが好きなんだね。


 ◇  ◇  ◇


 砂浜で、ただ海を見つめる。

 それだけで幸せ。


 手、繋ぎたいな……


「……手繋ごっか」


「うん♪ ふふっ、テレパシーだ」


「……ハナ、手を繋ぎたい時に癖が出るんだよね」


「えっ!? なになに? どんな癖?」


「秘密。私だけが知ってる事だから」


 私と……同じ所にいてくれる。

 飾らずに、本心で。

 

 私の事を、本当に好きでいてくれる。

 その真っ直ぐな瞳に……


「ハナ」


「ん? なぁに?」


「……呼んだだけ。ねっ♪」


 私の名前は溝口ハナ。

 赤い髪の毛と青い瞳がちょっとだけ目立つけど、普通の中学生。

 そんな私に最近恋人が出来た。 

 私は彼女に恋をしている。

 

 彼女もきっと……


「ハナ、また来ようね」


 だって……私達は恋人だから。


「ふふっ♪ 約束だよ?」


 今日も明日も。

 ナツと一緒に。

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