第7話 夏の暑さ
「私も行くー!!」
「一回家に戻るだけだから、ね?」
日曜日になり、流石に夏ちゃん周辺の事情を知りたいので家に帰ろうとしたのだが……
「一人にしないで……」
今まで寂しかった分、絶賛爆発中なのだろう。
それは分かるけど……
「学校始まったらどうするの? ハナとクラス違うし……」
「休み時間は全部ナツといる。一緒に登下校する」
この子には笑顔でいて欲しい。
なら俺が保護者代わりになれば……
【それじゃあ違うだろう!? JC同士の甘酸っぱい感じが良いんじゃないの? えっ!?】
必死だな。
【醸し出してこうぜ!! こう、ほらっ、アレだよ!!】
語彙が少ねぇな。
【とにかく一緒にいるべきだ。同じ目線で、OK?】
っていうかお前は誰だよ。
「……じゃあハナも一緒にくる?」
「うん♪ 支度するね」
どうなる事やら……
◇ ◇ ◇
「ここがナツのお家?」
ハナの家から徒歩15分。
素朴な平屋を、キラキラとした目でハナは見ている。
「うん、実感は無いけどね」
「へー、ここが……へー……」
嬉しそうに家を眺める。
可愛いな。
【お主もこちら側に来たようだな】
一緒にしないでくれる?
「とりあえず中に入ろっか」
あまり生活感のない部屋。
必要最低限な暮らし。
何か手掛かりになりそうな物はないかな……
ふとハナを見ると、何やら目を閉じてニコニコしている。
「どうしたの?」
「今ね、ナツを感じてるの。だってナツの匂いがいっぱいなんだもん」
あぁ、なんでこの子はこんなにも……
「ナツの部屋はどこ?」
「こっちだよ」
「……ナツのベッドだ!!」
そう言うと、子猫の様な瞳でこちらを見てきた。
ハナの事がなんとなく分かってきた気がする。
「うん、いいよ」
「へへっ♪ おじゃましまーす!!」
ハナは嬉しそうにベッドにダイブする。
シーツを握りしめて名前を呟く姿を見て、俺の中で何かが生まれそうだった。
【お主もまたJC、なんの罪もない。欲望の赴くままになだれ込むのだ!!】
いや、そこは自重しようよ。
自重……
控えめにハナの横へと倒れ込み、ハナと目が合うと、お互いに微笑んだ。
この感じ……
どちらからともなく、キスをした。
ハナは顔を隠すようにうつ伏せになって足をパタつかせる。
白い肌は、赤くなった耳を強調させている。
ただひたすらに可愛い。
部屋を見回すが、これといったものはない。
本当に必要あるものしか……
唯一の手がかりは、スマホに残された市外局番から始まる履歴。
月に一回程度かかってきている。
夏ちゃんはSNSもやっていないようだし、写真も残されていない。
かけてみるか?
「ナツ……」
「ん?」
ハナが困った顔でこちらを見てくる。
少し思い詰めすぎてたかな……
明日、担任にそれとなく聞いてみるか。
だから今日は……
「……日曜日だし、DVD借りてハナの家で一緒に見よっか」
「うん!! ナツ大好き♪」
そういってハナに抱きつかれ、そのまま倒れ込んだ。
お互いの距離が近くて。
顔が熱いのは照れているだけではない。
今日も真夏日、物理的に暑い。
「暑いね、アイスでも買ってく?」
「うん、パ○コね♪ ナツと一緒だと美味しいの」
半分に分けたアイスは美味しさも気持ちも分けあえて。
この笑顔は独り占めしたくて。
溶けていくアイスと心に、夏の暑さを感じた。
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