呪いの代行
ツヨシ
第1話
女子大生のときに私は、アルバイトを探した。
そして見つけた。
呪いの代行業者の事務。
なんだか面白そうと思ったのだ。
時給も悪くない。
面接を受けたらあっさり採用になった。
社長を含めて社員は三人。
私は心の中で社長以外の二人を、メガネそしてチビと呼んでいた。
私の仕事は事務と電話対応、お客さんへのお茶だしに掃除。
仕事としては楽なほうだ。
お客さんはいろいろな人が来る。
一目で憔悴しきっているとわかる人、見るからにやばそうな人、なんだか妙ににやけている人、などなど。
お客さん一人につき三人のうちの一人が担当して、お客さんの希望する相手に呪いをかける。
事務所に三つの小部屋があり、それぞれ社長用、メガネ用、チビ用となっていた。
依頼を受けると担当したものが小部屋に入る。
すると中から呪文のようなものが聞こえてくる。
それも結構長い時間だ。
三人とも唱える呪文が少し違う。
私は呪いなんてものがこの世に存在するのかどうかも知らないので、三人の呪文が果たして効果があるのかどうかなんてわからない。
まあ呪いを信じても信じなくても、私の仕事の内容と時給は全く変わらないのだが。
料金は一依頼で数万が相場のようだ。
ところがある日、やけに横暴な中年男が来たと思ったら、男が帰った後、事務所の中が色めきたった。
「社長、やばいですよ、これ」
とメガネ。
「でも報酬が三百万だぞ」
と社長。
「やりましょう」
とチビ。
結局やることになり、いつもは一依頼一人でやるのだが、今回は三人全員で呪い始めた。
呪文を聞く限り、いつも以上に気合が入っていると感じたが、私は終業時間になったのでそのまま帰った。
次の日事務所に行くと、鍵は開いているのに誰もいなかった。
社長の携帯に何度電話しても、いっこうに繋がらない。
夕方まで事務所にいたが、結局誰も来なかった。
次の日も誰も来ないし電話も繋がらない。
その翌日から私は事務所に行くのをやめた。
あの三人がどうなったかは、まるで興味がない。
だが私は約一か月働いたのに、給料が未払いなのだが。
終
呪いの代行 ツヨシ @kunkunkonkon
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