第7話〜初めてのお出かけ〜

「う〜ん……うるさいな…。」


時刻は朝の6時。俺は基本的にアラームは使わない派なので、携帯が鳴り響くことなんてないんだけど…


そう思いつつ、スマホを手に取る。未だに眠くて目が片目の半分しか空いてないような状況だが、何とか手に取ることが出来た。……彩月からの電話?なんだろう…


「もしもし…どうした?」


「おはよ〜!まだ寝てるかな〜と思ったけどやっぱり寝てたんだね。ほら!今日は土曜日だよ!土曜日!10分ぐらいでそっち行くから、準備してて!」


とても元気な声が聞こえてくる。そんなに楽しみにしてくれてたなら悪い気はしないが、時間を決めていなかったのはこちらのミスである。


「ああ…随分と朝早いな……分かった、準備してる。」


にしてもこの時間なんだな。……10分となると意外と時間はない。さっさと行動しなければ


そう思い、俺は布団の誘惑を断ち切って洗面台に向かうのだった。



「いらっしゃい、彩月。」


ぴったり10分後に彩月は来た。顔を洗って、服を着替えていたらあっという間に到着してた。意外と10分は短いものだ。


「お邪魔します。……寝起きってことはご飯食べてないよね?」


「ん?ああ、食べてないな。彩月は?」


「私も食べてないよ。怜侑君さえ良ければ喫茶店に行って食べようかなって。いいお店があるし。そこで今日どこに行くかの発表をしようと思って」


「いいよ。準備するから、適当にくつろいどいて。」


せっかく考えてくれたのだから、断る理由もない。

ちなみに、自分の自由に使えるお金は高校生にしてはそこそこある方だ。今まで使い道なくて貯金してたし。


「悪い、待たせたな。」

全部の準備を終えたので彩月の前に行く。それなりに服装にも気を使ったつもりである。おかしくはないぐらいにしておかないとな。


「……………………」


声をかけたのに何故か無言の彩月。おーい、生きてるかー!おーい!


駄目だ、返事が無い、ただの屍のようd


「生きてる!まだ生きてるから殺さないで〜!」


生きてた、良かった。


「どうしたんだ?急に無言になって。体調でも悪いか?」


そう心配し、顔を覗き込む。……うーん、熱はなさそうだけど…


「な、なんでもない!なんでもないの!気にしないで!それより早く行こ!置いてくよ」


「お、おう。なんでもないのな。…って待って、置いてくな!走るな危ないから!」


……今日1日、俺は振り回されるのだろうか。大変かもしれない。



走り回る彩月を落ち着かせた後、俺達は喫茶店に来ていた。何でもお洒落で大人な雰囲気が楽しめるらしいが、店内に入ってから驚いた。本当にお洒落やん……。


「……なんで関西弁?」


「気にするな、たまにはそういう時もある。……で、今日はどこに行くんだい。」


「んーとね、ここ出たらまずは電車に乗って、隣町のショッピングモールまで行って、映画でも見ようかな〜って。」


「ふむふむ、映画か。いいね、楽しめそう。」


「良かった。これで映画が嫌いだったらどうしようかと思ったよ…」


「別に嫌いじゃない。普段見に行かないけど、彩月となら楽しめそうだし。」


「……怜侑君、優しいしそういうとこずるいよね…」


「ん?何か言ったか?」


「んーん!何でも!」


確実に何か言っただろうけど…まあいいか。


「で、映画を見たあとは昼ご飯を食べて、時間までちょっと買い物に付き合ってもらおうかな〜って」


「りょうかい、俺も服買いたかったしちょうどいいかな。」


話し終わったあたりで注文したのが届いた。俺はとモーニングセットのアイスコーヒーを。

彩月は紅茶とモーニングセットだった。


「ご馳走様でした。…そろそろ行こっか」


「ん、そうだな。」


そう言って、彩月が伝票を触る前に回収する。そしてそのままレジに向かって会計を終わらせた。もちろん彩月には払わせていない。


こういうのは、男が出すべき!というのは些か古い考えかもしれないけど、そうするべきだろう。


「……怜侑君、さらっとそういうことをしちゃうんだ。」


「ん?何か問題でもあったか?……悪いな、嫌な気分にさせたなら」


「今のされて嫌になるわけがないよ。出させちゃって申し訳なくなるけど。」


「なら良かった。別に、これぐらいならなんともないから気にするな。あ、それから。言うのが遅くなったな。……服、似合ってて可愛いぞ。」


本当は最初見た時からずっと思っていた。なぜ伝えなかったかと言うと、恥ずかしかったからである。


…恥ずかしかったんだよ、分かるかね君達に。


「そう言ってくれて、良かった…。今日のために選んだかいがあったよ〜。あ、あのね」


照れているのか、それとも口にするのが恥ずかしいのか。彩月は顔を赤くしながら一言


「怜侑君も、似合ってるよ。かっこいい」


その一言を受け、俺の思考はしばし停止したのであった。

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