第6話〜デートのお誘い〜

「…それで?どういう経緯があってお店に来てくれたんだ?」


「私を助けてくれた人が開いてる凄く美味しいご飯屋さんがあって、とっても優しい人が開いてるんだって話を、私が初めて来たあとしたの。で、今日家に帰ってお友達になったんだ〜って話をしたらお父さんが」


「そうか。なら、私達も今日食べに行くとしよう。ああ、彩月は黙っているように。」


「って、言ってたから。……怒ってる?」


怒るわけが無い。お客様である。誰であれ来てくれたことを怒るなんてことはそうそうない。


「怒ってはないよ。来てくれるだけで嬉しいし。びっくりはしたけど良い人達だったし。…さ、食べるぞ。」


「うん…頂きます。豪華だね、今日」


「残り物だけどね。…最近魚ばっかりだからなぁ。明日は別のものが食べたいな…」


「ふ〜ん…何が食べたいの?」


「うーん…最近カレー食べてないからカレーかな。明日は学校休むし、ルーはあるはずだから朝から準備しておこうかな…」


「そっか、毎日は来れないんだっけ。…明日は行けないから、頑張ってね?」


「ありがとう。彩月も学校頑張れよ。」


なんだかんだ、俺はこの状況を受け入れているのだろう。寂しいとかんじてしまった。今まで人と話すことなんてろくになかったから尚更か。


「ありがとう。…美味しい。」


「お口にあったようで何よりだよ。…店で出すのより流石に劣ってるから、そこは申し訳ないけど…」


お店の残り物だしな。今日は作りすぎたし。


「そんな事ないよ。ちゃんと心がこもってるもん。」


「そりゃ、美味しいと思ってもらいたいからな。しっかりつくるさ。」


「何かお礼しないとな〜……あ、」


いいことを思いついた!という表情になる彩月。気になるな…


「ん?どうかしたか?」


「ね、次暇な日って、ある?」


「暇な日か……定休日が水曜にあるからその日かな……とはいえ、土日は18時から開店だから朝から18時までなら暇だけど」


「土日だけ遅いのって、何か理由あるの?」


「俺も本当かは知らないけど、おばあちゃんは俺と遊ぶためって言ってたな。あんたも必要なものはあるだろうし、それを買ったり、一緒に遊んだりするために〜って。」


あんまり遠くへは連れて行けないけど、出来る限りあんたを楽しませてあげたい、とはおばあちゃんの言葉だ。親代わりをしてくれていたんだよな。……いいおばあちゃんだよ、ほんとに。


「いいおばあちゃんだったんだね。そんなおばあちゃんだったから、優しい怜侑君に育ったんだね。」


優しく、全てを包み込むような優しい目をしてそう言った彩月。……やばい、泣きそうだ。俺も歳なのかな、こんなことで涙脆くなるなんて。


「ふふっ、泣きそうなの?いいんだよ泣いても。」


「……まだ遠慮しておくよ。それで、暇な日が…何?」


何となく泣いたら悔しいので話を逸らす事にする。


「ふ〜ん。そっか。じゃあ、土曜日1日貰ってもいい?」


「良いけど、何するんだ?」


そう訊くと、彩月は


「まだ内緒〜!」


と、いたずらな微笑みを携えてそう言った。しばしそれに見とれてしまって、後でからかわれたのはここだけの話である。



夜道は危ないからと彩月を送っていき、片付けと仕込みが済んだ頃には夜中の2時になっていた。

明日1日頑張って、明後日は楽しもう。そう思い布団に入った。……てか、これってデートになるのかな…


そんなことを思いつつ、就寝に就いた俺だった。


2日後の土曜日、朝の6時から元気な天使様に叩き起されるとはこの時は夢にも思わずに。

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